【独自】霊感商法で捕まった元詐欺師が語る、逮捕と服役中の心境の変化

霊感商法詐欺で服役していた元加害者(Nさん仮名)へのインタビューです。こちらのインタビュー記事は、詐欺の実態を知ることで、詐欺の被害に遭わないようにすることを目的としています。

第3回は、犯行時の心情や罪悪感についてお話ししていただきました。第4回逮捕までの経緯や、服役中の心境についてお話ししていただいています。

Q7いつどうやって捕まりましたか?また、刑期はどのくらいですか?

編集者:では、先ほどまで犯行内容やその心情をお伺いしたのですが、次に捕まった時のお話をお聞きします。先ほど、捕まったとおっしゃっていたのは、2012年の10月末でしたが、それはどういった経緯や形で逮捕されたのでしょうか?

Nさん:最初の逮捕案件は、(2012年4月から同年6月に行った)投資詐欺でした。逮捕令状が出た時にはすでに霊感商法を始めていました。その逮捕当時、住まいは品川区、使っていた詐欺アジトが渋谷区だったんですが、逮捕当日の朝は用事があり事務所に行けなかったんですね。そういった日はいつも、ナンバー2から連絡が来るはずなのに、その日は連絡が無かったんです。
「何かおかしいな」と思いました。何回電話をかけても繋がらずに、最終的には電源が入っていない状態になったんですね。他のメンバーにも電話をしたら「どうも警察っぽい人がアジトの前にいます」と言われました。それでもにわかには信じられませんでした。
というのも、そのナンバー2は投資詐欺でも一緒でしたし、霊感商法では僕がトップをやっているのになぜ僕の自宅に警察が来ないのかと。他のメンバーとも逐一連絡を取っていたのですが、途中で同様に連絡がつかなくなってしまいました。とりあえず、事務所のある渋谷区方面に向かいました。
その道中で、当時一緒に霊感商法の出資をしていた仲間にも電話をし、彼の家に言って相談をしていたんです。そうしたら、お昼ぐらいに警察から着信がありました。警察の電話番号は末尾が0110なので、すぐに警察からだとわかりましたね。
そして電話に出たら「○○今どこにいるんだよ」と聞かれ、いま渋谷区内ですと答えたら、「品川区の家にいるから、今すぐ戻ってこい。わかるよな?逃げるなよ」と言われました。そこで、「逃げません、帰ります」と答え自宅に戻りました。
自宅マンションに戻ったら、警察がマンションのロビーに十数人ほど待っていて、捜索令状を出されて自宅を捜索。任意同行を求められ従い、警察署に行く道中のパトカー車内で「逮捕するから」と言われました。その捜索令状を出された時に、どの事件で足がついたのか(=投資詐欺で令状が出たというのが)知りました。

編集者:そうすると、他の人たちも一斉摘発だったのですか?

Nさん:そうですね、(2012年4月から8月まで投資詐欺に加担していた)メンバーは一斉摘発でしたね。

編集者:当時警察の方に「逃げるなよ」と言われいても逃げられる環境だったと思うのですが、そこでは逃げようとは思いませんでしたか?

Nさん:逃げようとも思ったのですが、逃げても来るし、逃げて闇に潜んでも死ぬしかないよな、などと考えていました。また、変な自信があり「多分捕まっても大丈夫。起訴されず出て来れるでしょう」という気持ちもありました。

編集者:それは何が大丈夫だと思ったのですか?

Nさん:(暴力団から派遣された)弁護士と話をして、とりあえず黙秘を続ければ、釈放されるだろうと言われていたんです。実際にはそんなことなかったんですけど、その弁護士の話を真に受けていたので、大丈夫だと思っていました。なので、「20日間我慢するか(註3)」、という感じでしたね。

編集者:では、20日間の勾留のみだと思っていたんですね。

Nさん:そうですね。それもすごく浅はかなのですが、そう思っていました。

編集者:その2012年10月末に逮捕をされてから、刑期はどのくらいでしたか?

Nさん:まず、逮捕から判決が出るまでの期間(=未決期間)についてお話します。判決が出たのが2013年の11月の頭で、既決になったのが11月末でした。ですので、一年間ずっと取り調べを受けていました。公判が始まってからも取り調べは受け続けていました。

編集者:何件立件されたのですか?

Nさん:全部で8件です。投資詐欺で4件、霊感商法で4件でした。そして、求刑が懲役8年、判決は懲役7年でした。未決勾留日数(註4)が7ヶ月だったので、実際は懲役6年5ヶ月ですね。刑務所にはちょうど5年いて、現在(2019年4月時点)は仮釈放中の身です。模範囚であったことと、身元引き受け人もしっかりといたので、刑期満了前に仮釈放として出てこれました。

編集者:逮捕されてからの今までの間は、ご家族は受け入れてくれたのですか?

Nさん:接見禁止命令が出ていたため弁護士を通じてですが(註5)、妻には逮捕後しばらくは「別れてくれ」と話していました。しかし、妻が「詐欺行為を気付けなかったこと、そしてちょっと変だなと感じていても、スルーをしてしまっていた自分にも責任があるから、待っている」と言ってくれました。ただ、当然と言えば当然ですが、妻の周りはかなり反対していたようです。今は妻方の家族とも自分の家族とも連絡をとっています。

(註3)「20日間我慢するか」:1回の逮捕(1逮捕令状)の最大勾留期間が20日間
(註4)未決勾留日数:逮捕から判決が出るまでの勾留期間のうち何割かを書面上の刑期から差引くこと、その差し引いた日数
(註5)接見禁止命令が出ていたため弁護士を通じて:逮捕勾留期間中は証拠隠滅や共犯者との口裏合わせなどを防ぐために面会や手紙のやり取りが制限されることがある。もっとも厳しいものは、選任弁護人(=弁護士)以外接見出来ない。

Q8刑期中は何を考えていましたか?

編集者:少し話が戻ってしまうのですが、刑期中の心情と言いますか、何を考えていたか教えてください。

Nさん:捕まった時は「出れる、処分保留で釈放になるでしょ」という思いの方が強かったのです。実際に、事件に関しても最初はずっと黙秘で喋らずにいました。しかし途中で霊感商法の方に取り調べを切り替えられて(霊感商法でも逮捕されて)、全て話さなければなりませんでした。
なぜなら、霊感商法の方は、僕がトップで、メンバーは僕やナンバー2の後輩で、その後輩たちを実刑にさせてはいけないと思い全て話しました。実際に、その後輩たちは実刑にはならなかったのですが、その霊感商法の取り調べを受けている時から少しずつ心情が変っていきました。
また、(前述の暴力団から派遣された弁護士とは違う)昔から付き合いのある弁護士さんに諭された部分もあり、投資詐欺の方も話そうと思いました。それが捕まってから3~4ヶ月ほど経ったころでした。

編集者:最初の3~4ヶ月は黙秘で通そうとしていたけど、その後に思い直して供述を始めたのですね。

Nさん:最初の頃は、全然反省していなくて、自分のことしか考えていませんでした。「すぐに出れるでしょ。次はどうしようかな?」と思っていました。

編集者:それは、刑期が決まる前ですか?

Nさん:そうですね、刑期が決まる前です。心情は少しずつ変わっていきました。途中から面会が出来るようになって(註6)、家族や知人と話をしたり手紙のやり取りをした事も大きかったです。自分のこれまでの人生を振り返ってみたり、事件そのものについて改めて向き合ってみたときに、やっぱりこのままじゃ駄目だなと感じました。
自分がすごく酷い事をしたなとか、取り返しのつかない事をしてしまったという気持ちが強くなっていきました。それは、いきなりそう考えるようになったというわけではなく、徐々に芽生えてきました。それは、前出の面会以外にも、弁護士さんと何度も接見したりとか、たくさんの本を読んだりして少しずつ変わっていったのだと思います。実際に面会に来てくれた人も、僕の表情がどんどん変わっていったとも言っていました。

「刑が決まる前に、もう俺は何年の刑でも受け入れよう」と思っていました。例えば組織犯罪がついて(註7)、懲役15年とかになっても受け入れようと思っていたので、刑が決まったときにはもうこの刑期をたとえ満期でもしっかりやろうと思いました。変な話なんですけど、外の人が僕の受刑生活を見た時に「この人本当に受刑者なのか?」って思えるようなレベルで頑張ろうという思いでやっていました。それは受刑中ずっとそうでした。

(註6)面会が出来るようになって:途中で接見禁止が解除されることがある
(註7)組織犯罪がついて:組織犯罪に認定されると、同じ犯罪でも刑期が概ね2倍になる

まとめ

逮捕された時の状況や、その後の心境の変化についてお話ししていただきました。逮捕直後は自分のことしか考えられず、反省もしていなかったということですが、多くの方に諭され、支えられて心境が変わっていったのは救いだったなと思います。

また、暴力団から派遣された弁護士もいたということで、法的な観点から「逮捕されても大丈夫」という自信を持って犯行に及んでいる人がいることは、私たちも知っておかなくてはいけないと感じました。

第5回では、仮釈放で出所した今、思うことをお話ししていただきました。

ぜひお読みください。

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