誤認逮捕は年間でどのくらい発生しているのか?防犯カメラの進歩と扱う側の課題について

防犯カメラの普及と技術の向上により、事件が解決に向かうケースが数多くあります。しかし誤認逮捕、さらにはプライバシーの侵害をしてしまう可能性など、防犯対策のためとはいえ注意点はたくさんあるのが現状です。

先日も愛媛県警が女子大学生を誤認逮捕し、さらには実名で報道までされてしまったことで大きな問題になりました。こちらも防犯カメラを過信しすぎた警察の失態と言えます。もっとも、この誤認逮捕の問題点はその後の取り調べの警察側の態度にもありますが。

防犯対策の技術の進歩と誤認逮捕

防犯対策に有効なカメラの技術が飛躍的に向上するなか、その映像の鮮明さに頼りきった「誤認逮捕」が増加しています。誤認逮捕とは文字通り、事件の犯人でもないにもかかわらず逮捕をしてしまうことを指します。
防犯カメラの技術が向上し映像が鮮明になったのは、防犯対策をする側にとっては喜ばしいことであるといえます。しかしその技術の向上により、思わぬところで問題が発生しているのも事実です。

誤認逮捕は年間どのくらい発生しているのか?

誤認逮捕の件数は公表されない

毎年警察庁は「犯罪統計」という統計資料を発行していますが、この資料の中に誤認逮捕の件数が掲載されることはありません。そのため、正確な値は分からないのです。いわば警察側の失態ですから、大きな問題にならない限りは積極的に情報公開することはないのでしょう。

推計では、毎年200〜300人が誤認逮捕されている

誤認逮捕の件数について有力な情報は少ないのですが、久保博司氏の著書『誤認逮捕 冤罪はここから始まる(幻冬舎)』によると、2010年に起きた誤認逮捕の件数は343件と記載されています。

警察庁の統計資料によると、2010年の検挙人員は322,620人となっているため、統計的には逮捕者の1000人に1人は誤認逮捕と考えることができます。もっとも直近のデータである2018年の検挙人員は206,094人であるため、約200人は誤認逮捕されていると推測されます。

実際の誤認逮捕の例

防犯カメラの映像だけで犯人を特定し、その映像を解析したところ別人と判明したという、防犯カメラだけに頼った誤認逮捕が発生しています。

以下は読売新聞の記事の一部です。

窃盗で誤認逮捕、科捜研の画像鑑定で別人と判明
2018年12月23日 22時47分

警視庁は21日、野方署が今年10月、東京都内の20歳代の男性を窃盗容疑で誤認逮捕し、約3日間勾留したと発表した。

警視庁幹部によると、中野区のコインランドリーで10月6日、洗濯機から女性の衣類が盗まれた。防犯カメラに不審な動きをする男が映っており、翌7日に来店したこの男性と体格や髪形が似ていたことから、野方署が男性を窃盗容疑で逮捕した。

調べに対し、男性は容疑を一貫して否認し、送検後の同10日に処分保留で釈放された。その後、警視庁科学捜査研究所で防犯カメラ画像を鑑定したところ別人と判明。野方署幹部が今月19日、男性に謝罪した。

出典:読売新聞(2018年12月23日)

いくら鮮明になったとはいえ、それが仇となることもあるという事例です。映像というある意味では曖昧なものを扱う以上、防犯カメラは誤解を招きやすいツールともいえます。
そのため犯行現場の映像をとらえた防犯カメラであっても逮捕の決め手にはなりづらいのです。防犯カメラの映像による逮捕と誤認逮捕は、いつも隣り合わせです。

防犯カメラはあくまで防犯対策のため

近年では防犯カメラの映像が決め手となり、事件の解決や犯人の逮捕につながるケースも多くあります。しかし本来、防犯カメラというのは逮捕のためではなく、文字通り防犯対策を目的として設置されるカメラを指すものです。そのカメラがあることで、未然に犯罪を防ぐことが求められているわけです。

紹介した誤認逮捕の例のような、「映像に頼り切った逮捕」をさせないことが今後ますます重要となってくるでしょう。

よく映画やドラマでは防犯カメラの映像を使って誰かを陥れる描写がありますが、そういった可能性が絶対にないとは言い切れないのが現在の捜査能力です。

動画が証拠にならなくなる日も近い

また、近年動画編集の技術が飛躍的に向上し、「ディープフェイク」という編集技術が話題になっています。これはある動画の登場人物に対して別人の顔を合成し、表情や声までそっくりに作り変える技術のことです。ディープフェイクの技術が進歩すれば、もはや動画を有力な証拠として用いることはできなくなっていくでしょう。

防犯対策の技術の進歩と個人情報、プライバシーの侵害

防犯対策としてカメラを用いる場合、注意すべき問題がもうひとつあります。個人が識別できてしまう映像は、個人情報にあたるということです。それがたとえ防犯対策として設置したカメラの映像であっても、個人情報であることに変わりはありません。

防犯対策とはいえ、個人が識別できてしまうような鮮明な映像は、プライバシーを侵害してしまう危険性があるのです。

防犯カメラを設置する際には、プライバシーの侵害にあたらないようくれぐれも注意しましょう。防犯目的で設置していることや、設置されている場所が一見してわかるよう周知しましょう。これは、プライバシーに配慮するとともに、犯罪者への抑止力にもつながります。

再発防止の為には?

一度誤認逮捕されてしまった無関係の人を助けてくれるのもまた、防犯カメラの映像にあるといえます。
JR東日本では2020年までに、山手線の全車両に防犯カメラを設置すると発表しました。期待されていることは、痴漢をはじめとする電車内でのトラブルを正確に把握することです。つまり、裏を返せば冤罪や誤認逮捕を防ぐことにもつながります。

もっとも、防犯カメラを扱う側が細心の注意を払って捜査に当たることが必要不可欠ではあります。捕まえてから自白を強要すればいいだろうという前時代的な考えのままでは、防犯カメラが導入されたところで何も変わりません。

逮捕して身柄を拘束することは、人権を侵害する行為です。それを認められているのが警察であり、逮捕は相当に慎重な判断を必要とするのです。逮捕された人には、前歴が残ります。また、実名が報道されることで、その後の人生に重大な影響を及ぼすことがほぼ確定的です。しかし、誤認逮捕だった場合に十分に尊厳を回復するような措置は取られません。

愛媛県警が女子大学生を誤認逮捕した件でもそうですが、担当した捜査員が「悪者」と決めつけて無実の罪を認めるように強く迫ったことに対して、捜査員は非常に手厚く守られます。組織の長が会見を開いて謝罪すればそれで終わりであり、個人の尊厳を著しく傷つけるような捜査手法を告発された捜査員は、今後も別の事件で捜査をします。

最近では、裁判員裁判の対象事件や検察が独自に捜査する事件の取り調べについて、原則、全過程の録音・録画(可視化)を義務付けた改正刑事訴訟法が2019年6月1日に施行されました。これは冤罪を防ぐ大きな一歩ですが、対象事件が限定されていたり、機器の故障時は対象外になるなどの問題点があります。

カメラの映像を犯罪の証拠として使うなら、いかなる事件においても取り調べが適切な形で実施された証拠としてカメラの映像を残すべきです。誤認逮捕や冤罪については、まだまだ改善の余地があります。今や、外を歩けばどこかの防犯カメラにはあなたの姿が映っています。誰しもが誤認逮捕される可能性があることを念頭におき、警察の権力についても真剣に考える必要があります。

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