私が振り込め詐欺師になって逮捕されるまで3〜元詐欺師が語る架空請求に引っかかる理由〜

私はおよそ3年半に渡り詐欺に加担していました。
私個人としては名前や顔などを公表すべきだと思うのですが、現状家族を説得出来ておりませんので、かなりの部分を伏せさせて頂きます。ご理解賜りたく存じます。

簡単に自己紹介をさせて頂きます。1982年にとある地方で生まれた男です。
2012年10月に逮捕、その後懲役7年の実刑判決を受け、栃木県喜連川社会復帰促進センターに収監。2018年11月に仮釈放となり出所し、現在は仮釈放の身です(刑の終了日は2020年4月)。

いくつか内容の異なる詐欺に加担した身として、誰でも詐欺に遭う可能性はあると断言します。たとえ今でないにせよ、常に身の回りに潜んでいると考えて下さい。私の話がどれだけ詐欺被害を防ぐ事に繋がるか分かりませんが、防犯意識の向上や騙される人がいなくなる事に少しでも寄与できればと思いペンを取りました。おもしろおかしく話すつもりはありません。また犯罪を助長するつもりも一切ありません。

第二回目はコチラからご覧ください。

第三回目の本日は、架空投資詐欺の続きについて述べたいと思います。

こんにちは。

架空投資詐欺に限らず、特殊詐欺は手口が変わる事がよくあります。

その変化の度合いは大小限りません。新しい詐欺は警察などの公的機関やメディアにも取り上げられておらず、注意喚起が促されづらいのですぐに詐欺と気付くのが難しいケースもあります。

この点の防ぎ方について私が思うところはまた改めて述べたいと思います。

前回もお話ししたように、私が関与していた架空投資詐欺は3年間で大きく分けて2つの手口がありました。

今回は【後期パターン】についてお話しします。

【後期パターン】2010年秋冬~2012年夏まで使っていました。

架空投資詐欺後期パターンの概要は次の通りです。

1-1.How:手口の全体像

過去に金融商品やリフォームなどで詐欺(まがい)に遭われた方に名簿を元に電話でアプローチをします。
前提として、その販売元はアプローチ時に倒産しています。

被害金額(中央値):500万円/
*金額の大きい方だと1億円を超える方もおりました。

被害者の割合:名簿全体の約2~3%の人が引っかかりました。(一度支払った方に追い打ちをかけると、ほぼ全ての人が再度支払ってくれました。多い方だと10回近く払ってくれました。)
*この点は前期パターンとほとんど変りません

1-2.How&How much:手口の詳細

マッチポンプ(劇場型)で詐欺を行います。前期パターンよりもかなり複雑になります。また、いわゆる「二次被害」の詐欺です。

後期パターンの登場人物です。

A:金融商品を発行し、投資を募っている会社(=最終的な振込先)
*前期パターンと異なり、ほとんど何もしません。しかし、最後に被害者を半ば「脅す」という役割を担います。

B:投資被害等の集団請求を代行する会社
*前期パターン同様、B社は何らかの理由でA社の金融商品を直接買うことが出来ない、という設定にします。またB社のような会社を複数存在させることもあります。

Cさん(個人):役割が2つあります。
(1)B社に会員登録をし、被害者から過去の詐欺商品を買い取る役目
(2)A社の金融商品を欲しがっている
*B社に会員登録をしていることから、「クライアント」と呼んでいました。
*信用させるために電話口に登場させることもありました。
*大企業の役員で引退された方を調べて使っていました。元・警察庁長官の名前を使ったこともありますが、すぐに警察から連絡が来たのでやめました。

平均すると、前期パターンと同様に最初のアプローチから約1ヶ月で最初の入金となりました。これを3ヶ月間を1クールとして出来る限り取り切ります。

詐取のポイントは2です。
(1)過去に何らかの詐欺(まがい)に遭われた方に「スイスの銀行に隠し財産が見つかってそのお金を取り戻せる」と伝える
(2)「裁判沙汰になる」と脅す

では、詳細です。

<1回目:B社からのアプローチ>

B社と申しますが、◯◯様(=最終的な被害者)は以前、△△という金融商品で被害に遭っていますよね?(マルチやリフォーム詐欺でも良い)

△△の代表者が隠していたお金がスイスの銀行で見つかりました。その被害金を面倒な手続き無しで取り戻す事が出来ます。また、事前に支払う費用は一切ありません」

などといって、被害者にメリットのある話をする。ここで被害者が話に乗ってきたら集団請求の流れを説明し、被害者宅に書類を送ります。

*この書類が重要で、パンフレットや社版・会社の印鑑がついた契約書(のようなもの)を同封します。

*この時点では大半の被害者も半信半疑です。

*もう少し詳しくお話しすると、B社から「正規の手続きを踏むと1~2年の時間がかかる。それを大幅に短縮するために弊社に登録しているクライアントさんが先にお金を出して被害者の方から買い取る形を取る。そのため、買取手数料が数%発生するが、買取額から天引きするので◯◯様が事前に支払うお金はない。弊社やクライアントはその正規の手続きで全額得られるので利益がある」などと安心させます。

<2回目:B社からのアプローチ>

書類一式が届いた時点で被害者から連絡が来ることもあります。2回目のアプローチでは被害者に残る不安を取り除くことに腐心します。この時に再度、取引の流れを説明します。

<3回目:B社からのアプローチ>

「弊社に会員登録しているクライアントにあたっていて、皆すごく良い反応を示している。その中で買取日が早く金額の高い人にしようと思っている」などと話す。

また、この時にA社の情報をすり込みます。その際、「クライアントさんの何人かから聞かれたのですが」など切り出してB社自体はA社にあまり興味が無いように装います。

<4回目その1B社からのアプローチ>

被害者と良好な関係が構築出来たと感じた時点で、次のように話します。

「クライアントが見つかった。買取金額は被害額の95%で買取日時は××、買取場所は~~(主に地域で一番大きなホテル)でいかがですか?」

「ただ、一つ条件があって、◯◯様の地域でのみ販売されているA社の金融商品をCさんが欲しがっている。購入資金の他、謝礼金も出すので代わりに申し込んでくれませんか?」

と伝えます。この時に大事なのは、「被害者に出してもらうお金はない事をはっきり伝える」事です。

8割方OKしてもらえたと記憶しています。また、申込金額は1,000万円以上と高額にします。この電話の後、お互いの署名・押印をした契約書を交わします。

<4回目その2:A社のアプローチ>

A社に連絡が来るので対応します。連絡がない場合は、B社から被害者にプッシュします。

A社からは「開発研究拠点を◯◯様の住んでいる地域に新設する話が決まっている。上場が決まっていて、増収増益なので地域の皆様にも還元したい」などと話します。

ここまで来るとほとんどの方が申し込んでくれます。また、振込期日は当初、B社及びCさんの買取日時より「前に」設定します。

<4回目その3:B社からのアプローチ>

被害者に「Cさんの身内に不幸があり、当初の買取日時は難しくなった。」などと話し、A社の振込期日より後に設定し直します。(「海外の要人とサミットに向けたミーティングが急遽決まった」などと話すこともありました)

当然被害者は難色を示します。B社はここでも被害者に寄り添って、「Cさんとは違うクライアントを探す。A社には断りの電話を入れてください」などと言います。

<5回目:A社からのアプローチ>

被害者からキャンセルの電話がきますが、「上場に向けた書類を既に関係各所に提出している。その中に株主一覧の書類もあって、そこに◯◯様の名前もある。今、キャンセルとなると信用を失い上場が出来なくなってしまう。そうすると他の株主さんから◯◯様に損害賠償責任を求める裁判になる」などと脅します。

<6回目:B社からのアプローチ>

被害者からB社に連絡がきます。この時、Cさんは連絡がつかない設定になっています。

被害者は裁判沙汰になりたくないのですが、1,000万円を超える金額をすぐに用意出来る方はなかなかいません。そこで、B社の社員役として被害者とずっと連絡を取っていた者が「会社(=B)に内緒で個人的に700万円ならかき集められる。残りの300万円を用意できませんか?」「再度設定した買取日時に必ず伺うので安心してください」などと被害者に持ちかけます。

金額は会話の中かから相手に合わせて設定します。私もいまだに不思議に思うのですが、この流れでお金を振り込んでくれます。

<その後>

これも不思議なことですが、一度入金するとタガが外れたようになります。A社からもB社からもとにかくA社を持ち上げ、「もっとやった方が良い」と煽ります。B社も「多ければ多いほど、Cさんの出す謝礼が増える」などと話します。すると、いとも簡単に追加入金に至ります。

2.When:事件発生のタイミングは?

主に平日の日中に電話でアプローチをしていました。固定電話、携帯電話問いません。

3.Who:どんな人がターゲット?

過去に金融商品・マルチ商法・リフォームなどで詐欺に遭った方(販売元の会社は倒産している事が条件です)

使用したリストで覚えているものでは、「ワールドオーシャンファーム」(海老養殖の投資・マルチ商法)、「ふるさと牧場」(和牛預託)、「サムニングループ」(住宅リフォーム)、「メビウストレード」(先物取引)などです。先物取引は確率が高く、また金額も大きかったので他の先物業者リストも使っていました。

4.Where:事件発生場所・狙いやすい地域

全国各地にアプローチしていました。ただ、東京都以外が好まれていました。

理由は前期パターンと同様、登場人物(会社)の所在地設定が東京都であり、東京在住の方はその設定上の所在地まで実際に来ることがあったためです。当然、その設定所在地に会社が存在しないわけですからここでバレてしまいます。(もちろん被害者の中に東京在住者はいます)

5.What:お金を騙し取る名目

A社の金融商品(=株や転換社債など)購入

6.Why:(私が感じた)引っかかる理由

(a)B社が被害者の不安を取り除き良好な関係を構築したため
(b)社版・実印のついた契約書などを送ることで信用度を高めたため
(c)被害者にも契約書にサイン・押印をして送り返してもらう事で後に引けなくしたため
(d)裁判沙汰になるなどと脅したため

*警察の取り調べで担当刑事から聞いた話で、ある被害者は「途中まで半信半疑だったが、押印のある契約書で完全に信用してしまった」ようです。

お金は口座振込がメインでしたが、2011年末頃からは郵送で私設私書箱に送ってもらうこともありました。その際、「口座振込だと税金面で不利になる」などと適当な理由をつけていました。適当な理由でも何かしら理由付けする事ですんなり送ってくれました。

冒頭でも申しましたが、詐欺の手口は変わります。今回ご紹介した手口も被害者に応じて少し変化させることもありました。

今回は以上です。

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いかがでしたでしょうか。
弊社では以前、上記の元詐欺師の方からご連絡をいただき、インタビューをさせていただきました。その中で、元詐欺師だからこそわかる事、伝えられることがあると感じ、今回のコラムを出すことを決めました。

被害に遭わないためには、対策だけではなく、被害の実態と手口を知ることも大事です。このコラムで一人でも多く被害に遭われる方が減ることを願っています。

こちらのコラムは、毎週水曜日に更新します。第四回もぜひご覧ください。第二回はコチラからご覧いただけます。

Moly.jp編集部

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