【今日の事件簿】目立ちたくて嘘をついたせいで誤認逮捕?綾瀬母子殺人事件とは

今から31年前の11月16日に綾瀬母子殺人事件が起きました。この事件では誤って3人の少年が逮捕され、結局真犯人が明らかにされないまま公訴時効を迎えてしまいました。今回はこの綾瀬母子殺人事件について紹介していきます。

綾瀬母子殺人事件の詳細と誤認逮捕

1988(昭和63)年11月16日、東京都足立区綾瀬のマンションの一室で、当時36歳の母親と当時6歳の男の子が殺害され金品が奪われました。犯人の遺留品や目撃者はなく捜査は難航しましたが、警察は翌年の1989年の4月に事件現場の近くに住んでいた当時16歳の少年Aと当時15歳の少年B、そして、同じく当時15歳の少年Cを逮捕しました。逮捕の経緯は、まず逮捕された少年3人は事件の後、興味本位から事件現場であるマンションを見物しに行きます。

そこで、聞き込み捜査をしていた刑事から犯人に関する情報を知らないかと質問されるのです。3人は人に注目されたいという思いから、事件現場の近くで不審な人物を見たと嘘の証言をしてしまいます。刑事は少年3人の不審人物に関する供述が不自然であったため、疑念を抱きます。そして、3人を詳しく調べたところ、事件当時3人とも不登校の状態で犯行現場での不在証明(アリバイ)が無いことがわかりました。

そうした理由から警察はこの3人が母子強盗殺人の犯人であると思ってしまうのです。その後、警察は保護者への連絡もせずに、少年3人に警察署への任意同行を求め署内で深夜まで尋問します。被疑者と思い込んでいる警察は少年3人に厳しく母子を殺害して金品を盗んだことを誘導・強要し、その結果3人は母子強盗殺人をしたと自白してしまいます。その後は、警察官の意向に合致した供述調書を作成され逮捕となってしまったのです。

裁判とその後

1989年5月に検察官は少年Aが主導的立場の殺人実行犯とみなして逆送致による刑事処分とし、少年Bには従属的立場の殺人実行犯とみなして長期の少年院送致。少年Cには従属的立場の幇助犯とみなして短期の少年院送致が適切であるとして、家庭裁判所に送致しました。そして、3人の身柄は警察の留置所から少年鑑別所へと移管されるのです。3人の少年審判では少年側に日本弁護士連合会の子どもの人権弁護団の中から9人の弁護士が付きました。

審判で弁護士は少年A・B・Cの3人は、捜査段階では刑事司法制度や社会に関する知識や経験が乏しく、そこを警察官に付け込まれて誘導され、母子を殺害したと虚偽の供述をさせられたと主張。3人それぞれが、この事件とは何の関係もなく無実であると主張しました。また、警察官が少年たちを誘導し、自白を強要して供述させた供述調書のなかの供述と事実がかみ合わない点が多く見られました。

例えば、殺害に使われた凶器が供述と鑑定の結果が一致しなかったり、Aが現場から盗んだとされる物が被害者の所有物だと証明ができなかったりしました。さらに、少年Cが事件当日被害者宅の玄関で見張りをしていたと記載されていましたが、当時Cは塗装店で働き、勤務記録によって事件当日は出勤していたことがわかったのです。しかも警察官が、事件当日Cが出勤していたと証言した従業員を、出勤記録は事実ではないと証言しないと偽証罪で逮捕すると脅迫していたこともわかりました。

これらのことから1989年の9月東京家庭裁判所は少年3人に対して弁護士の主張の通り、無実であると判断して刑事裁判での無罪に相当する不処分の決定を下しました。その後警察はこの事件について捜査することはなく、綾瀬母子殺人事件は2003年11月16日に公訴時効が成立するのです。

まとめ

今回紹介した事件は警察の捜査ミスによる冤罪事件です。冤罪事件は巻き込まれた人の、その後の人生を狂わせるため決して許されることではありません。しかし、今回の事件では少年たちが興味本位で事件現場に行き、人に注目されたいという思いから警察に嘘の証言をした事が発端となりました。こうした事件に巻き込まれないようにするためには、まずは人の命が奪われた事件や現場を重んじる気持ちが大切となります。興味本位やふざけ半分などの言動は避けるようにしましょう。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

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