【今日の事件簿】推定無罪の壁。残忍な犯行でも無期懲役になった広島小1女児殺害事件

今から14年前の11月22日、広島小1女児殺害事件がおきました。この事件の犯人はペルー人で、母国でも未成年に対する婦女暴行事件を3件以上起こし指名手配されていました。今回はこの広島小1女児殺害事件について紹介していきます。

広島小1女児殺害事件の概要

2005(平成17)年11月22日の午後、広島県広島市で当時7歳の小学1年生が下校途中に行方不明となりました。そして、同日午後5時頃空き地に放置されていたガスコンロの段ボールの中から遺体となって発見されたのです。遺体には下半身に性的暴行の際に受けたと思われる指で傷つけられた痕跡があり、頬には涙の痕がありました。

死因は絞殺による窒息死で、死亡推定時刻は13時から14時の間だとわかりました。警察の捜査によって遺体が入っていた段ボールが東広島市のホームセンターで売られていたものだとわかります。そして、ホームセンターの購入履歴から、このガスコンロを買った人物が割り出されるのです。ガスコンロを買ったのは事件現場の近くに住んでいた当時自称30歳と語っていたペルー人の男でした。警察は指名手配をし、11月30日に男は三重県鈴鹿市にある親族の家で逮捕されました。

犯人の男と事件の詳細

逮捕されたペルー人の男は自分では30歳と言っていましたが、33歳であることがわかります。男が日本に来たのは2004年の4月。年齢も偽っていましたが、本名も偽って日本に入国していたことがわかりました。この男は本国であるペルーでも未成年者に対して3件以上の婦女暴行事件で指名手配されていたのです。しかも、男はペルーに妻と子ども2人を残して出稼ぎに来ていたのです。しかし、来日当初働いていた三重県内の自動車部品工場では、他の出稼ぎ目的の外国人のような必死で働く姿はみられなかったそうです。

男が事件現場となる広島県広島市に移住してきたのは2005年の夏ごろで、その直後から片言の日本語で周辺の女性や女児に声をかけるなど、不審な行動をしていました。そして、事件当日の11月22日の午後、自宅アパートの階段そばに座っていたところ、被害女児が1人で通りかかります。男は声をかけてわいせつな行為をしようと殺害を企て自分の部屋に招き入れ、首を絞めて殺害。女児の服を脱がせてひどすぎるわいせつな行為をおこないました。

その後、遺体を段ボールに入れて近くの空き地に運んで放置。いったんアパートに戻ってランドセルや体操着などをゴミ袋に入れて遺体発見現場から数百メートル離れた場所に捨てました。そして、11月30日に三重県の鈴鹿市にある親族の家に身を潜めていたところを逮捕されたのです。男は取り調べに対し「悪魔が乗り移った」などと訳の分からないことを主張していたそうです。

裁判

広島地方裁判所における第1審では検察側は確定的な殺意を持ち、自己の性欲を満たそうとした犯行で、身勝手な動機に酌量の余地はないなどとして死刑を求刑しました。しかし、2006年7月の判決では無期懲役が言い渡されます。男が犯したペルーでの犯罪について、推定無罪の原則上前科が証明できず初犯扱いとなったことと、計画的犯行ではなかったことが大きかったようです。

2008年の12月、控訴審の広島高等裁判所では検察側調書が第1審で取り調べなかったことは違法として審理不尽を理由に第1審の判決を破棄し、審理を広島地方裁判所に差し戻しました。これに対して被告側が上告したところ、最高裁判所は控訴審判決を破棄。再び広島高等裁判所に差し戻されました。2010年7月の広島高等裁判所での第2審の判決では被告人に殺意があり、猥褻目的による犯行で刑事責任能力もあることを認めたうえで、計画的犯行ではなかったとして無期懲役を言い渡し、第1審の判決を支持しました。

この判決に対し検察側は最高裁への上告を検討しますが、判例違反であると上告するのは困難だとして上告を断念。被告側も上告しなかったため、無期懲役の刑が確定しました。

まとめ

今回紹介した事件は母国に妻と子どもがいるにもかかわらず、自らの性欲を満たすために幼い少女を襲って殺害するという残酷極まりない事件でした。しかも、この男は母国でも未成年を襲って指名手配され、偽名や年齢を詐称して日本に入国しました。極刑ではない結果に被害に遭った少女の遺族を始め、多くの人が納得いかなかったかもしれません。

子どもがこうした事件に巻き込まれないようにするには、日ごろから子どもたちに防犯意識を高めさせることが大切となります。また、各家庭に加えて地域を挙げて子どもたちを守るための防犯対策も必要となるでしょう。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

地域で防犯対策はご近所付き合いも重要になります。隣人と連携して不審者情報などを共有するのも対策の一つかもしれません。

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。

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