【今日の事件簿】父親を疑うマスコミの報道姿勢が問題視された香川・坂出3人殺害事件とは

今から12年前の11月27日に香川・坂出3人殺害事件の犯人が逮捕されました。この事件では誤った報道によって被害者の父親が犯人であるというイメージを世間に与えてしまいました。今回はこの香川・坂出3人殺害事件について紹介していきます。

香川・坂出3人殺害事件の概要

2007(平成19)年11月16日の朝、香川県坂出市で幼児姉妹と祖母の3人が行方不明となりました。前日の11月15日に隣の祖母の家に泊まり行った幼児姉妹を母親が迎えに行ったところ3人ともいなくなっていたのです。姉妹の父親によると寝室や玄関、浴室に血痕があり寝室のカーペットはL字型に切り取られて、血はカーペットの下の畳まで染み込んでいたそうです。

警察は11月16日の未明から早朝にかけて何らかのトラブルがあったとの見方を強め、捜査を開始。室内が荒らされておらず財布なども残っていたことや、犯行時間帯に3人の悲鳴や物音を聞いた人がいないことから、顔見知りの犯行の疑いが強いと考えました。そして、祖母と金銭トラブルがあった祖母の義弟である男が浮上。話を聞いたところ犯行を認める供述をしたため、11月27日の夜に死体遺棄容疑で逮捕しました。

男は当初、遺体を山中に捨てたと供述し山中に向かっていたところ「本当は港に捨てた」と供述を変えたため港に向かいました。そして、祖母と幼児姉妹の遺体が発見されたのです。男の供述通りに携帯電話などが見つかったため、警察は12月18日に殺人容疑で再逮捕しました。

裁判とその後

2008年7月高松地方裁判所で初公判がおこなわれますが、ここで精神鑑定の実施が決定し公判は一時中断。2009年3月に再開され判決公判では検察側の求刑通り死刑の判決が言い渡されます。弁護側はこの量刑を不当として高松高等裁判所に即日控訴しました。同年の9月に高松高等裁判所で控訴審の初公判がおこなわれ、即日に結審。10月の高松高等裁判所での判決公判では控訴を棄却し、地方裁判所での第1審の判決を全面的に支持して再び死刑の判決が言い渡されました。

弁護側は最高裁判所へ即日上告をしますが、2012年7月最高裁判所は上告を棄却し男の死刑が確定しました。そして、2014年の6月に大阪拘置所で男の死刑が執行。死刑の確定から1年と11カ月の刑の執行は比較的早いものでした。

間違った報道

事件発生当初、この事件は「行方不明事件」として報じられていました。被害家族は始めのうちは積極的にテレビの取材に答え「とにかく早く帰ってきてほしい」と訴えます。しかし、なかなか安否がわからず家族もいらだち始め、その疲れからか幼児姉妹の父親が何度も取材に来るマスコミに対して憤る姿を見せてしまいます。すると、マスコミはその姿を中心に報道するようになり、いつしかその父親に対して「犯人ではないか」というような報道姿勢に変わっていきました。

また、自宅の間取りを間違えて報道したり、行方不明の子どもの2人の顔写真のフリップの名が逆であったりと、誤った報道内容もあり家族を苦しめます。こうした過熱したメディアの報道が問題視され、香川県警記者クラブが総会を開き、節度ある取材を訴える事態となりました。特に当時の朝のワイドショーでは司会者があからさまに父親を犯人扱いする発言を繰り返し、父親をさらに怒らせ、その後テレビ局の幹部とともに家族に謝罪するという事もありました。

さらに、この司会者の発言を受けて、ある女優も犯人は被害者の父親であるとの憶測や、父親が犯人であってほしいなどとの会話をブログに書き込んでしまいます。このブログに対して批判が多く寄せられ、1年間の謹慎処分を受ける事態にもなったそうです。

まとめ

今回紹介した事件は行き過ぎた報道など、さまざまありましたが金銭トラブルによる殺人事件です。この事件では金銭トラブルとは何も関係のない幼い子ども2人が命を奪われてしまいました。祖母の家に遊びに行って巻き込まれてしまっただけですので、防ぎようがなかったかもしれません。しかし、金銭トラブルによる犯罪は防ぐことができます。まずは、金銭の貸し借りは人間関係を壊すものだと認識することが大切です。それを踏まえてトラブルにならないように、細かい配慮が大切となります。

Moly.jp編集部

この記事の監修
河合さん写真
河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

お金が絡むと血が繋がっていても悲しい事件に繋がってしまう…やるせないですね。犯行を行うのも、裁くのも、報道するにも人間。考えさせれらます。

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。

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