【今日の事件簿】飲酒運転死亡事故でたったの懲役4年。法改正に繋がった東名高速飲酒運転事故とは

今から20年前の1999年11月28日、東名高速飲酒運転事故が起こりました。この事故では飲酒運転をしていたトラックの運転手によって幼い姉妹が亡くなり、マスコミによって大きく取り上げられ危険運転致死傷罪の成立に大きく影響しました。今回はこの東名高速飲酒運転事故について紹介していきます。

東名高速飲酒運転事故の概要

1999(平成11)年11月28日の午後3時30分ごろ、東名高速飲酒運転事故が起きました。箱根からの行楽帰りだった乗用車が、東名高速道路から首都高速用賀料金所にさしかかる手前で、高知県から東名高速道路経由で東京に向かっていた大型のトラックに追突されたのです。乗用車には会社員の男性とその妻、当時3歳と1歳の女児の4名が乗っていました。大型トラックに追突されて乗用車は大炎上。

運転していた妻は自力で運転席の窓から脱出し、助手席にいた男性も救出されました。しかし、後部座席で寝ていた女児2人は焼死してしまうのです。救出された男性も全身の25%を火傷する大やけどを負って緊急手術を3度受け、約3カ月入院し、その後も入退院を余儀なくされました。夫婦はそれぞれ車から出る時に娘2人の最後の声を聞いたそうです。トラックを運転していた男は、その場で現行犯逮捕されました。

加害者の男と裁判

トラックを運転していた事故の加害者は飲酒運転の常習者でした。事故の当日も高知県から大阪へのフェリー内や、東名高速の海老名SAなどで合わせてウイスキー750mlの1瓶とチューハイ1缶を飲んでいたそうです。事故当時はひどい酩酊状態で、まっすぐ歩くこともできない状態でした。呼気中のアルコール濃度も1リットルあたり0.63mgだったそうです。事故が起きる前には日本道路公団に不自然な蛇行運転をするトラックがいるとの通報が相次いでいました。

また、東京料金所では加害者が料金を支払う際に必要なハイウェイカードを探すのに手間がかかったため、係員がトラックを路肩に移動させて探させました。そして、カードを係員に渡しに来るときに運転手の足元がふらついていたため、係員が声をかけます。しかし、運転手は風邪気味で薬を飲んだから大丈夫だというようなことをいい、休憩も取らずに運転を再開しました。この時に被害に遭う乗用車がトラックを追い越していて、その後追突事故が起こるのです。

刑事裁判では、トラックの運転手は業務上過失致死傷罪などの罪に問われました。検察は刑法第211条に定める同罪の法定刑では最高刑にあたる懲役5年を求刑しましたが、2000年6月東京地方裁判所は運転手に対し、懲役4年の判決を言い渡します。検察はこの判決を不服として飲酒運転では異例の控訴に踏み切りますが、2001年1月東京高等裁判所は控訴を棄却し、懲役4年の刑が確定しました。

被害者遺族と危険運転致死傷罪の成立

被害者遺族は刑事裁判での法律の限界を感じていました。そして、この事故から約5カ月後の2000年4月に神奈川県座間市で飲酒及び無免許、かつ無車検の暴走車が大学に入学したばかりの青年をはねて死亡させるという事故が起こります。この事故の加害者にも懲役5年6か月という量刑が科せられ、この青年の母親が今の日本の法律に命の重みが反映されていないことに憤りを覚え、法改正を求める署名運動を起こすのです。

東名高速道路飲酒運転事故の被害者遺族も、この運動に心から賛同して全国各地で街頭署名を重ねます。そして、合計で37万4339名の署名を集め、世論にも後押しされて2001年6月には道路交通法の改正案が国会を通過。同年11月には刑法改正案が全会一致で国会を通過して危険運転致死傷罪が刑法に新設されました。

まとめ

今回紹介した事故は飲酒運転によって幼い2人の命が奪われた事故で、新たな法律を成立させた事故でもありました。車は便利である反面、凶器ともなります。「少しなら大丈夫」とか「いつも平気だから今回も大丈夫」などとは決して思うことなく、常に安全運転を心がけることが大切です。また、交通事故は誰にでも巻き込まれる可能性があります。自分はルールを守っていても、相手が守らず事故になるケースもあるからです。特に子どもには徹底して交通安全に関して教えておきましょう。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

飲酒運転に起因する事故はそもそもルール違反をしているわけで許しがたい犯罪です。ルールを厳しくしないと守れない人間の性は悲しいですがこれから宴席が多くなる季節、絶対に飲酒運転はしない、させない、を一丸となって守りたいですね。

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。

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