【今日の事件簿】死刑か冤罪か?「マルヨ無線事件」とは

今から53年前の12月5日、マルヨ無線事件が起きました。この事件は主犯の男に死刑判決が下されましたが、裁判がもつれて未だに死刑が執行されていません。今回はこのマルヨ無線事件について詳しく紹介していきます。

マルヨ無線事件の概要

1966年12月5日の深夜、福岡県福岡市にある電気店「マルヨ無線」に強盗が入り、宿直で勤務していた店員2人がハンマーで襲われました。犯人は2人組で現金22万円余りと腕時計を奪い、主犯格の男が証拠隠滅のため石油ストーブを蹴飛ばし放火して逃走。襲われた店員のうち1人は何とか自力で脱出しましたが、もう1人は焼死体となって発見されました。脱出した1人も治療に5カ月間を要する重症でした。

事件発生から5日が経ち、共犯であった当時17歳の少年が警察に出頭。主犯格であった当時20歳の男も、事件から約3週間が経った12月27日に逮捕されました。

犯人と犯行動機

主犯格の男は1946年生まれで事件当時20歳。マルヨ無線でアルバイトをしながら専門学校へ通い、卒業後にマルヨ無線に正社員として採用されました。しかし、店の商品を盗んで質屋に入れていることが判明し、解雇されて警察に通報されます。男はこの事件では窃盗の非行事実で保護観察処分となり、その後別の電気店に就職するも再度商品を盗んで質屋に入れていたことが発覚して窃盗罪で検挙。今度は中等少年院に2年間入ることになります。

男が身柄を拘束されているときに、当時のマルヨ電気の店長が男の住んでいたアパートに無断で入り、当時男がローンで購入したステレオを持ち去ります。これを知った男は腹を立て、少年院で知り合った当時17歳の少年を誘って、マルヨ電気への強盗計画を立てるのです。実際に実行に移すきっかけとなったのは出所後にスピード違反で捕まり、罰則金7000円の金策に困ったからでした。

裁判とその後

犯人の2人は強盗殺人罪・現住建造物等放火罪などで福岡地方裁判所へ起訴されました。そして、1968年12月に裁判所は主犯格の男に死刑判決を言い渡します。男は控訴し、福岡高等裁判所での裁判に進みますが、控訴審から放火を否定するようになりました。警察の取り調べで厳しく追及され「石油ストーブを足で蹴って放火した」と嘘の自白をしたと主張。しかし、1970年3月の控訴審の判決でも第1審を支持され、控訴棄却の判決が出てしまいます。

さらに、最高裁判所での裁判でも上告棄却の判決が1970年の11月に言い渡され、死刑が確定。ちなみに共犯であった少年には第1審で懲役13年の判決を言い渡し、控訴審で刑が確定しています。死刑囚となった男は被害者に対する謝罪の念は表明しましたが、謝罪と雪冤とは相反しないとしたうえで放火したとの確定判決を否定し、福岡地方裁判所へ4度再審請求をおこないました。

福岡地方裁判所は4度すべて棄却し、その後日本弁護士連合会が死刑囚となった男の再審事件委員会を設立。1979年2月に5度目の再審請求をしました。その際、事件当時マルヨ電気の消火活動をした消防士や現場を調べた警察官の「現場の石油ストーブが人為的に倒された形跡がない」との証言もありましたが、福岡地方裁判所は1988年10月に再審請求の棄却を決定します。

その後も弁護団は高等裁判所や最高裁判所に同型のストーブの燃焼実験や共犯の少年、生存した被害者の尋問を請求する上告書を提出。ストーブを蹴っても横転することはないと認めさせることには成功しました。しかし、1審で被告らが放火方法について争わなかったため認定されたに過ぎませんでした。さらにはストーブを倒さなくても動かして室内の物に燃え移らせた事実は変わらないとして、結局再審開始には至らなかったのです。

男は2013年の7月にも福岡地方裁判所へ第7次再審請求を提起し、2019年3月の時点でも審理中です。死刑判決から50年以上が経っても男は死刑が執行されることなく福岡拘置所に収監されています。

まとめ

この事件では裁判では判決が出たものの、未だに再審請求がおこなわれ真実がどうだったのかはっきりとはわかっていません。しかし、この事件は強盗事件には変わりありません。許されない事件としてみなさんも記憶に留めていただければと思います。

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この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

現在も強盗事件はいたるところで発生しています。防犯意識を高めて、できる限りの対策をしていくことが大切です。不安なことがあればお気軽に私のところにご相談くださいね。

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。

Moly.jp編集部

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