【元詐欺師が解説】昔からある「還付金返還詐欺」はなぜなくならないのか?

こんにちは。これまで本メディアで10回に渡り詐欺業界の裏側についてお話ししてきたNです。この度、Molyさんのご好意でまた連載させて頂く事になりました。今連載のテーマは、「最新詐欺事情の解説」です。特殊詐欺・悪徳商法に深く関わった者として、自衛に繋がる知識を読者の皆様と共有し、詐欺や悪徳商法がゼロになる世の中に少しでも近づく事に微力ながら貢献出来れば、と思っております。

第2回目の本日は「還付金返還詐欺」を見ていきましょう。

「還付金詐欺」とは

この還付金詐欺は極めて古典的な特殊詐欺です。

前回の分類図では手口とツール(=詐欺師が被害者との接点に用いる手段:この場合、固定電話と携帯電話)がいずれも旧型の「②旧型詐欺」に該当します。

各金融機関、警察や公的機関でよく注意喚起が促されている特殊詐欺の一つで、読者の皆さんの中にもご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

そのため、「いまだにそんな古典的な詐欺に引っかかる人がいるの?」と思われる方もいるでしょう。私の個人的な感想を述べると、同じ様にそう思う一方で「引っかかる人がいてもおかしくない」とも思っています。この理由は後述します。

前回も申し上げましたが、詐欺に対する自衛の一つは「実際の詐欺事例に触れておく」事です。そうする事で似た状況に陥った際、危険を回避することが出来る可能性が高まります。

では見ていきましょう。

【詐欺事案】

下記の事案は、先月に報道された還付金詐欺絡みの逮捕事案です。

この様にいまだに還付金詐欺が発生しています。

【手口概要】

還付金詐欺はいわゆる「旧型詐欺」に該当します。上記の例もトーク内容の詳細は書かれていませんが、過去に使われたトークとほぼ同じ内容だと思われます。概要としては

1.公的機関などを名乗る人間から、「医療費や税金などの過払い分を返金する」などと電話がかかってくる
*公的機関ではなく民間企業を名乗る事例も確認されています
*最初の接点が書類のケースもあります。この場合も次段階で電話を用います

2.携帯電話を持ったままATMに誘導される

3.電話越しに指示を出し、ATMを操作させ振り込ませる。
*その際、被害者に気づかれない様に「英語の画面に変更させる」ことが一般的です。

<ワンポイント!>
ズバリ「携帯電話を繋いだまま」「(窓口ではなく)ATMを用いる」2つです。個人的には、(特に高齢の方で)この2点がセットになっていればほぼ間違いなく詐欺に該当すると思っています。

1.ターゲット】

60代以上の方が圧倒的に多いです。
警察庁の発表によると、平成30年度に還付金詐欺に遭った方の約85%65歳以上との事です(1)

2.被害金額】

警察庁の発表では、平成30年の還付金詐欺被害総額は22.5億円、認知件数が1,904件とあります(2)。この認知件数を全て被害件数とすると平均被害額は約120万円となります。おそらく最頻値・中央値も同程度と思われます。

3.考えられる二次被害】

言い方は酷ですが、還付金詐欺に引っかかる方はあらゆる詐欺・悪徳商法のターゲットになり得ます。還付金詐欺自体で直接の二次被害はありませんが、「オレオレ詐欺」「架空請求」「霊感商法」などをはじめとした詐欺グループからカモ扱いされています。

4.見極めのポイントと対策】

「電話で話しながらお金が戻ってくることはない!」
………のですが、急かされるなどして冷静な判断が出来ない状態では見極めることが出来ないこともあります。また、還付金詐欺は短時間での勝負となりますから、被害者がご家族など身の回りの方と接触することも出来ずに周囲が気づけないこともあります。

冷静でない状態でも詐欺を防ぐために、
1.迷惑電話対策のアプリを導入する
2.ATMでの振込限度額を設定する
などして未然に防いだり、被害額を最小に抑える必要があります。

5.騙された後の対処法】

残念ながら、この手の還付金詐欺で入金してしまったお金は戻ってくることはありません。

6.元・詐欺師の視点】

「引っかかる人がいてもおかしくない」と前述しました。この理由は、「何かに初めて遭遇する時、冷静な判断が出来なくなることがある」からです。また、旧型の詐欺が無くならない別の理由の一つは、「過去に同種の詐欺に手を染めていた人間が再び関わる」からではないでしょうか?

これは私が逮捕されて取り調べを受けた際に警察から聞いた話なのですが、詐欺罪で収監された人間が出所後に同種の詐欺に手を染めることが少なくないそうです。その時、過去の経験をそのままなぞればある程度の金額は騙し取れると考え、再び悪事に手を染めるのではないでしょうか?

まとめ

以上が今回取り上げた詐欺事案に対する私の見解です。

今回の詐欺事案は手法としては非常に単純です。しかし、判断を鈍らせ、短時間で勝負をかけてくることから【4.見極めのポイント】を知っているだけでは不十分です。事前に詐欺に遭わない対策や詐欺に遭っても被害を最小に抑える対策を講じることが重要です。

文中註釈
(12) 警察庁「平成30年における特殊詐欺認知・検挙状況等について(確定値版)」

▶︎第1回【元詐欺師が解説】被害が急増している「バイナリーオプション詐欺」の実態と対策

Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

防犯電話や迷惑電話防止アプリなど、具体的に対処できる方法は沢山出てきていますが、この事例のような手口がある!と言うことをまず知っていただくことが被害阻止の最大条件です。ぜひ色々なところで話題にしてください。よろしくお願いします。

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。

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