そのストーカーは、病室で私の頭を撫でました。

こんにちは。メンタルケア心理士の桜井涼です。

前回、見ず知らずの相手からのストーキング行為と対策について書かせていただきました。今回は、面識のある相手がストーカーになってしまった時の実例と双方の心の動きについて書きたいと思います。

面識のある相手からストーキング行為をされた場合、恐怖もありますが、以前の状態(妄想を抱く前)を知っているため、「信じられない」気持ちの方が大きいかもしれません。知っている間柄だと、自ら接触してやめさせようとしますが、それが良くないことを知っていただき、初期対応の方法を知ってほしいと思います。

ストーカーの被害者と加害者の関係

被害者と加害者の関係が面識のある相手というケースは本当に多いです。
警察庁が平成30年に発表した資料の中に『ストーカー事案の被害者の性別、加害者との関係』があり、その中で関係を見たところ次のような状態でした。
・交際相手(元含む):43.3%
・勤務先同僚・職場関係:12.9%
・知人友人:12.8%
・配偶者(内縁・元含む):7.7%
・密接関係者:1.8%
(「密接関係者」とは、恋愛感情等の対象となった者と社会生活において密接な関係
を有する者 (家族、友人等)

このように、被害者と加害者の関係の多くが何らかの形で面識がある場合が多いことがわかっています。

警察庁:平成30年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について

面識があるからこそ、警察へ相談しづらく、行為がエスカレートしてしまってからの相談になってしまうことも少なくないようです。正直な話、著者も2回目のストーカー被害を受けた際は、友人であったため、彼の将来や自分が気を持たせてしまったのではないか、自分にも非があるのではないかと思い悩んで警察へ相談に行けませんでした。

では、著者が経験した元友人から受けたストーカー被害を実例として紹介しようと思います。

著者が遭ったストーカー被害

著者が2度目のストーカー被害に遭ったのは、最初の事件から1年半後のことでした。相手は学生時代からの友人で、同級生でもあった人物です。その人物をAと呼ぶことにします。

1.きっかけ

当時、あるボランティア活動に参加していました。その活動を通して、Aと再会しました。
卒業してから会っていなかったせいもあり、近況やボランティア活動について話し合ったりして仲良くしていました。仲良くといっても、電話番号を交換して活動の時に会うくらいです。2人きりで会うような関係ではありませんでした。

なぜかというと、以前見ず知らずの人から受けたストーカー被害にまだ少し怯えていたこともあります。それに仕事が楽しくて男性と付き合うとか、そういうことは正直考えられませんでした。同じ頃、父の転勤が決まり、家族が一緒について行くことになるといった環境の変化があり、その辺を楽しみにしていたという気持ちもありました。

2.断り

ボランティア活動が終わった後、Aに呼び出され告白を受けました。「付き合う気持ちがない」と正直にお断わりをしました。「そうか」とすぐに引き下がってくれたので、諦めてくれたのだと安心したのを覚えています。

3.無言電話と手紙攻撃

その日の夜から非通知で携帯電話に無言電話が来るようになりました。最初は「前のストーカーに電話番号を知られたのかも」と怖くなりました。でも、1年半何もなかったですし、塾にはかかってきていません。特徴といえるのは、毎日私が帰宅したのを見計らってかかってきているということです。

数日後、切手が貼られていない手紙がポストに入っていました。真っ赤なバラ柄の封筒と便箋です。差出人の名前はイニシャルのみでしたが、内容と筆跡でAだとわかりました。手紙の内容は、著者に好意を持っているということばかりが書かれていました。すぐに電話をして「やめてほしい」と言いましたが、手紙の話をした途端に、無言になってしまいました。

1通目の手紙以降は開封せずにシュレッダーにかけていましたから、内容がどのようなものであったかはわかりません。2週間も続くとさすがに疲れてしまい、共通の友人(男性)にやめてもらうように頼んでもらえないかとお願いしました。

今思えば、すべてが証拠であることがわかっていたのに証拠として取っておくことができませんでした。明確なストーキングの証拠であったとしても「言えばやめてもらえる」、「告白を断った自分に非があるせいだ」と思っていたのです。伝えてもらったところ、「もうしない」と言ったそうです。著者はその言葉を信じました。

4.来院

無言電話と手紙が止まり、安心していたところに、今度は盲腸にかかってしまうという災難に見舞われ、入院することになりました。その情報をどこで手に入れたのかわかりませんが、今度は病院に現れたのです。おでこを撫でられたことで目を覚ましました。そこにいたのはAでした。直接触れていたのです。

「何してるの!出てって。付き合えないって言ったでしょ。もうやめて」と言っているところに、ちょうど看護師さんが入ってきたため、Aは慌てて出ていきました。

看護師さんにAがしつこくつきまとって困っていると話したところ、事情を考慮してくれたのでしょう。入院中は面会謝絶にして入れないようにしてくれると言ってくれました。部屋も変えたかったのですが、あいにくいっぱいでそこまで無理にお願いはできません。早く治して退院することばかりを考えていました。

しかし、看護師さんたちの目を盗んで病室に入ってくるのです。その度にナースコールを押して追い払ってもらうことが2回ほどありました。もしかしたら、眠っている間に何度か来ていたかもしれません。寝ている間に何をされるかわからないと感じました。それに、もう他の人に迷惑はかけられないと思い、実家に電話をし、事情を説明して来てもらうことにしました。

5.失ったもの

この1か月間に起こったことの事情を全部話しました。父は激怒し、著者に落ち度があったのではないかと言いました。「相手に気を持たせるようなことをしたのではないか」と。警察に行くと言っていましたが、Aは優しい良い人であった記憶が強かったため、警察沙汰にはしたくないと頼みました。父の怒りはおさまらずAの自宅まで行き、Aのご両親と話をしたそうです。当人は電話にも出ず姿を見せることはなかったそうです。「今後娘に近づいたら警察に行く」と伝えたといいます。

Aは、父が自衛官であることや、著者が学生時代に生活指導に力を入れていて、当時から父は怖がられる存在であったこと(昭和時代によくいた雷親父のような存在でした)で、力のある相手だと判断したことも関係しているかもしれません。

家族で話し合い、仕事は辞めて一時的にでも両親の家に来た方がいいということになりました。
退院と同時に退職届を出し、そのまま両親が住む関東方面へと向かいました。心身ともによくなるまで両親との生活を余儀なくされました。仕事を失い、住んでいた家などはすべて両親が手続き等をしてくれ、何から何まで迷惑をかけてしまうという大ごとになってしまいました。

引っ越してからは携帯電話も変えたので無言電話も手紙も一切来なくなりました。父がAのご両親にこれ以上何かしたら警察に行くと話したことも効果があったのでしょう。しかし、著者が「友人だから」と警察に行くのを躊躇したせいで、失った生活や多くの人に迷惑をかけてしまったことは残念でなりません。

「元○○」という面識のある人がストーカーになってしまう理由と初期対応

著者が受けた面識のある人からのストーカー行為は、被愛妄想があることを共通としていますが、タイプ的には挫折愛のタイプです。別れを経験したり拒絶を受けたりといったことからストーキングが始まります。

「自分は受け入れられるはず」という気持ちが最初にありますが、その段階が過ぎると、「なぜ受け入れられない」という気持ちに変わり、次第に攻撃性の強い気持ちに発展することがあります。

元夫や元恋人が執拗に復縁を迫り、ストーキングから脅迫や暴力などへ変貌していき、最悪な場合は殺人に発展することがあります。だから、面識のある人がストーカー行為をしてきた場合は、できるだけ早く手を打つ必要があると思ってください。

面識のある人からのストーカー行為を受けているなら、できるだけ早いうちに周囲に助けを求めること、警察などの力のある人や団体に相談することが大切です。ストーカー行為をする人物は、気が弱いところがあり、また力のある人には接触しようとしない傾向にあります。

そして、電話番号を変えたり生活圏を離れたりして距離をあけることも有効です。ストーカーから身を守るためのシェルターなどもありますから活用するのも良いでしょう。

まとめ

面識のある人は、「一度受け入れてもらったことがあるので、今度も受け入れてもらえるはず」という甘えがあります。しかし、ストーカー行為は犯罪です。

著者が脅迫や暴力といった段階にいかずに済んだのは、早い段階で助けを求めたことだと思っています。そして、標的(著者)が生活圏内から消えてしまったことも諦めた要因になったのではないでしょうか。

面識のある人からのストーカー行為を受けているなら、周囲に助けを求めること、警察などの力のある人や団体に相談することを真っ先にしてほしいと思います。2回のストーカー行為を受けて著者が学んだ身を守る方法です。

▶︎第一回はこちらの“私のストーカー被害。メンタルケア心理士になった今、わかること。”をご覧ください。

この記事を書いた人
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桜井 涼
メンタルケア心理士/ライター

新潟県出身の元学習塾講師のメンタルケア心理士。「地球が滅亡しても生きていける」と言われていた自衛官の父からサバイバルや防犯に関するトレーニングを受けて育つ。塾講師時代より子どもの心の動きに興味を持ち、メンタルケア心理士の資格を取得。2009年より文筆家として活動。ストーカー被害に遭ったことをきっかけに、心理学を通して女性や子どもの防犯を呼び掛けている。

Moly.jp編集部

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