電話で別れを告げた次の日「彼はストーカーになりました」。

人を好きになることは、誰にでも起こりうる感情の動きです。しかし、相手の感情を無視し、執拗に迫ってつきまとう行為はよくありません。犯罪行為です。

ストーカー行為を行う人は、自分の行為が度を越して犯罪になっていることを理解していません。愛情表現の一部だと思う人もいるのです。今回はストーカー行為をしてしまう心の背景や行為(違法となるライン)について書きたいと思います。

ストーキングする理由と心の背景

なぜ、ストーカー行為をしてしまうのでしょう。
人を好きになった後、相手の気持ちに関係なく、自分の気持ちを一方的に押し付け、「両想い」だと思い込んでしまうところから始まります。その後も執拗につきまとってしまい、行き過ぎた気持ちと行動がストーカー行為となってしまうのです。

相手に対して一方的に強い好意や恋愛感情を持つと、「相手も自分のことを好きである」と思って疑いません。拒否してもそれを「自分の気を引くためにおこなっている」などと思い込んで行為を続けます。

また、元夫や元恋人といった深い関係にあった相手を対象としたストーカー行為は、関係修復が叶わないとわかると、狂暴な一面を見せ、誘拐や監禁、暴力や殺人を起こすこともあります。

ストーカー行為をする人の心の背景には、「とにかく相手と関わりたい」、「自分を好きでいてくれる相手が欲しい」という思いがあります。しかも、自分の頭の中で良いように妄想し、強く表れてしまうことも少なくありません。(自分本位で相手の気持ちは考えていません)

ストーカーを行う人に共通するのは、他人と適切な関係を持てないことや他人を思いやることが苦手であることです。このことから、幼少期から思春期の間に親との間で、十分な関係性を築けなかったのではないかと考えられます。

また、精神医学者である福島章医師も「ストーカーの行為には、未熟な心性を持ったまま大人になった人間の心理が典型的に認められる」と著書の中で述べています。
*新版 ストーカーの心理学(PHP研究所)

どこからがストーカー行為か

ストーカー規制法は、明確かつ具体的に定められています。
例えば、つきまといや待ち伏せについては次のように定められています。

「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。」

ストーカー行為等の規制等に関する法律 第二条一項より

これだけでなく、無言電話や面会・交際等の強要など細かく分けて記載があります。

しかし、現実となると1度されただけでも、言葉では言い表せないほどの恐怖を感じます。1度だけでもつけられたり、わいせつな写真を送りつけられたり、車のクラクションを鳴らされ続けたりなどといった行為をされたら、警察に相談することをお勧めします。
(何回もされなければ罪に問えないわけではありません)

なぜなら、つきまといなどの行為は、相手が自分の欲求を満たすために行っていることだからです。相手の気持ちを完全に無視して行っているということは、相手に迷惑をかけている行為と一緒です。

病的な兆候がある人だけがストーキングをするように思われるかもしれませんが、相手への思いが強すぎて異常な行動に出てしまい、ストーカー行為に走ってしまうことがあります。

元恋人がストーカーになった事例

著者が過去に面談をしていたHさん(当時24歳・女性・会社員)の事例を紹介したいと思います。

1.きっかけ

Hさんが元恋人からストーカー行為を受けたのは別れた翌日からでした。きっかけはHさんに他に好きな人ができたからだそうで、元恋人には電話で別れを告げたそうです。ケンカになったあげく、Hさんから別れを切り出し、元恋人も納得して別れました。

2.電話攻撃

翌日から着信履歴が全部元恋人というくらい電話攻撃が始まりました。仕事中にもかかってくるため、煩わしく思ったHさんは電話に出なかったそうです。あまりにもしつこいため、夜電話がかかってきたときは出たそうですが「なぜ電話に出ない」・「電話で一方的に別れを切り出すのは失礼だ」など、Hさんを責め立てたので、1度会って言わなければならないとHさんも翌日の仕事終わりに1度だけ会う約束をしました。

約束した店に行ってみると、「オレの気を引きたくて別れ話をしたのか」と言って、プレゼントを渡してきたそうです。まったく理解していないようだったので、好きな人がどんな人かを話し別れてほしいと頼みました。元恋人は納得できないようで、「別れない」し「別れる必要はない」というばかりで聞き入れなかったそうです。この時、「どうしちゃったの?今までと違う」と思ったといいます。
話は平行線でしたが、最終的には「別れたい気持ちは変わらない」と言ってその場を立ち去ったそうです。

3.つきまとい

Hさんは、元恋人を着信拒否設定することにしました。着信履歴に残るだけで仕事中に電話がなることがないのでそうしたといいます。数日経つと、着信が減ってきたのでようやく諦めてくれたと思い、安心していました。しかし、帰宅しているとつけられている感じがして、振り向いたら元恋人の車があったということが続きました。何をされるわけでもなく、ただ家に着くまで車がついてくる状態です。

しかし、警察に行くことができなかったといいます。「自分の一方的な心変わりが原因だから仕方がない」と。それに催涙スプレーや防犯ブザーを持ち歩いていたので、いざというときはそれを使おうと思っていました。

Hさんはそのうち諦めてくれるだろうと思っていたそうです。そんなある日、会社に元恋人から電話がかかってきました。「これで最後にするから話を聞いてほしい」とのこと。最後ならと思って会うことにしました。

4.面会の要求

会ってみたら、まだ付き合いの浅い現在の彼のことを調べ上げたというのです。彼の交友関係や職業などを話し出し、「Hにはふさわしい相手ではない、別れた方がいい」と言い出しました。そして、「自分とこれまで通り付き合ってほしい」と。さすがに怖くなったHさんは、「これ以上つきまとったら警察に行く」と店の中で大声で言ったそうです。びっくりした元恋人は、慌てて店を出ていき、それ以降姿を見せなかったそうです。

つきまといや電話がなくなったものの、いつも見られている感じがぬぐえず、面談にいらしたのです。不安や恐怖を感じながらの生活に疲れ、別れる原因となった彼とも別れてしまったといいます。
その後、警察に行くことを勧めましたが、「自分のせいだから」と相談に行くことはありませんでした。

このように強い思いから変貌してしまうことがあるのです。その後、Hさんの元恋人からの接触はありません。Hさんからの強い口調と人の大勢いる店内で大声を出されたことで我に返った状態だったのではないかと考えています。

ストーカーは当事者同士で解決できないこともある

今回、紹介した事例は、警察に相談することなく、相手が諦めたために、被害者が攻撃されるような事態に発展せずに終わりました。しかし、身体は無事でも精神的に被害を負った状態です。カウンセリングが必要な状況まで追い込まれてしまいました。

別れが原因で相手にストーキングから殺人事件に発展するケースがあることは知っておく必要があります。

例えば、ストーカー規制法が制定されるきっかけとなった『桶川ストーカー殺人事件』や、リベンジポルノの関連法案の成立のきっかけとなった『三鷹ストーカー殺人事件』です。

インターネットが普及し、手にする情報が増えてきたことも要因ではないかと思いますが、ストーカー行為は、当事者同士で解決することが難しく、命が危険にさらされてしまうこともあります。その点を考えて、対処していかなくてはいけないことを忘れないでほしいと思います。

まとめ

ストーカーは、ちょっとしたことが原因で起こります。面識があろうとなかろうと関係なく起こるのです。
相手に対して一方的に強い好意や恋愛感情を持ち、自分本位で「両想い」であると信じてしまうところから始まり、相手の気持ちなど関係なく接触を図ってきます。こういう場合は、ちょっとした出来事で相手を変だなと思うことがあるでしょう。

しかし、著者はそうでないパターンもあると考えています。
相手への思いが強ければ強いほど、「相手を手放したくない」という気持ちが働いてしまう場合です。そうなると、人の行動が変わってしまうことだってあるのです。そうなれば、当事者同士で解決することは難しいでしょう。

早い段階で警察へ相談したり、第三者に話しておくことが必要だといえます。すべては自分を守るために必要なことです。

▶︎第二回は“そのストーカーは、病室で私の頭を撫でました。”をご覧ください。

この記事を書いた人
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桜井 涼
メンタルケア心理士/ライター

新潟県出身の元学習塾講師のメンタルケア心理士。「地球が滅亡しても生きていける」と言われていた自衛官の父からサバイバルや防犯に関するトレーニングを受けて育つ。塾講師時代より子どもの心の動きに興味を持ち、メンタルケア心理士の資格を取得。2009年より文筆家として活動。ストーカー被害に遭ったことをきっかけに、心理学を通して女性や子どもの防犯を呼び掛けている。

Moly.jp編集部

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