【今日の事件簿】生まれたばかりの赤ちゃんを大量殺害?寿産院事件とは

今から72年前の1月15日、寿産院事件の犯人が逮捕されました。この事件は1944年4月から1948年1月にかけて、東京都新宿区で嬰児が数多く預けられていた寿産院で起きた大量殺人事件です。今回はこの寿産院事件を詳しく紹介していきます。

寿産院事件の詳細

事件の発覚は第2次世界大戦後間もない1948(昭和23)年1月15日、敗戦後の虚脱感がまだまだ残る時でした。1月15日の午後7時半過ぎ、東京都新宿区で警察官がパトロールをしていたところ、自転車に乗って数個のミカン箱を運んでいた男を発見。不審に思い警察官が事情を聞いたところ男は葬儀やとのこと。荷台に積んであったミカン箱を調べると中には嬰児の遺体が入っていました。

男に事情を聞くと近くで産院をしている「寿産院」から頼まれたもので、火葬場に運んでいる最中だったそうです。さらに、男の話によると前年の8月以来20体以上の嬰児の遺体を運んでいることがわかりました。警察がこの寿産院に駆けつけたところ院内には5人の子どもがいましたが2人はすでに凍死しており、残りの子どもも冬にもかかわらず肌着1枚しか着せられておらず泣く力さえないといった状態だったそうです。

この寿産院では新聞に広告を出して食糧難に喘ぐ母親たちから1人あたり5000円から6000円で赤ん坊を預かっていました。産院を経営すれば補助金も出て乳児用の主食配給などが獲得できる時代で、敗戦から3年しかたっていないこの年はベビーブームでもあり同時に貧しい混乱期でもありました。預かった子どもは1人300円から器量の良い子どもは500円という値段をつけ希望者に売っていたそうです。

警察はこの寿産院を経営する夫婦や助手として働いていた女などを殺人容疑で逮捕。その後の調べで寿産院では4年前の開院当時から100人以上の乳幼児が亡くなっていることが判明しました。しかし、産院の預かり台帳に書かれた子どもが200人を超え、区役所の埋葬確認証は103枚。子どもを預けた母親の名前や住所がほとんど偽りのもので寿産院から里子に出された98人の子どもの行先も不明でした。実際に何人の子どもが死亡し、何人が無事だったかは、わからずじまいだったそうです。

犯人とその動機

この事件の犯人として逮捕されたのは、寿産院を経営する主犯の当時51歳の女と、その夫である当時53歳の男。さらにはここで助手として働いていた女と診断書を偽装していた医師の4人でした。主犯の女は宮崎県出身で18歳で上京し、産婆となり23歳で夫と結婚。産院の経営を始め地域の産婆会の会長を務め、区議会議員選挙にも出馬しましたが落選しています。夫は茨城県生まれで地元の農学校中退後に現役志願で憲兵軍曹となり、警視庁の巡査も務めました。警察を辞めたあとは妻の尻に敷かれていたそうです。

この夫婦の犯行の動機は言うまでもなくお金でした。赤ん坊1人あたり5000円から6000円というのは、当時のお金ではかなりの大金で都や政府からの補助金や配給品ももらえたのです。しかし、夫婦は子どもの面倒をまったく見ることはなく食べ物もほとんど与えず、子どもが病気になっても放ったらかしにしていました。また、産院向けに支給されたミルクなどの配給品は闇市に横流しして、さらに私腹を肥やしていたそうです。

裁判

東京地方裁判所は殺人罪については証拠が不十分だとし、主犯である女には懲役8年。夫には懲役4年という極めて軽すぎる刑を言い渡します。助手の女は無罪となり、偽りの死亡診断書を書いていた医師には禁固4年の判決が言い渡されました。その後の東京高等裁判所での判決では、女に懲役4年。夫に懲役2年というさらに軽い判決が言い渡されました。ちなみに被害者の総数は、裁判でも明らかにすることはできなかったそうです。

まとめ

今回紹介した事件は戦後の混乱期だったとはいえ、誰もが衝撃を受けた事件ではないでしょうか。子どもをまるで商品や物のように扱うことなど現代では考えられません。しかし、現実に日本で起きていた事件です。今後こうした事件が起こらない社会が続くよう、大人がさらに責任ある行動をしなければなりません。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

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