【今日の事件簿】画家の男が犯人だったのか?捜査も問題視された帝銀事件とは

今から72年前の1月26日帝銀事件が起きました。この事件は犯人が逮捕され刑も確定しましたが、捜査段階において拷問に近い取り調べがおこなわれ疑問も残る事件でした。今回はこの帝銀事件について紹介していきます。

帝銀事件の概要

戦後間もない1948(昭和23)年1月26日、午後3時過ぎ帝国銀行椎名町支店に東京都防疫班の腕章を付けた1人の中年男が入ってきました。男は厚生省技官の名刺を差し出し、近くで集団赤痢が発生して感染者が1人この銀行に来た形跡があると支店長代理に伝えます。そして、GHQが銀行内を消毒する前に予防薬を飲んでもらいたいと、カバンの中から医者が持っている金属の箱を出します。その中から2種類の薬を出し、最初の薬を飲んでから1分後に次の薬を飲むように指示。飲み方を教えると言って、自らも薬を飲んで皆を安心させてから行員や銀行の用務員一家16人に薬を飲ませました。

男の真似をして皆が薬を飲み1分後に第2薬を飲んだ後、次々と倒れてしまいます。男が飲ませたのは青酸化合物でした。男は皆が倒れた後、現金16万円と小切手1万7450円分を奪って逃走。銀行員の一人が、意識が朦朧とするなか這って銀行の外に出て通行人に事情を告げ、近くの派出所に連絡がいき警察官が駆け付けます。警察官は尋常じゃない現場を見て、すぐに本署に連絡するとともに皆の介助をおこないます。しかし、16人中12人が死亡するという大量毒殺事件となってしまいました。ちなみに犯人の男が奪った16万円と1万7450円という金額は、現在の貨幣の価値に換算すると100倍近くになるそうです。

捜査と犯人逮捕

この事件の捜査の焦点は、犯人である男が支店長代理に渡した厚生省技官の名刺にありました。しかし、支店長代理が犯人から受け取った名刺を紛失していたことがわかります。そこで捜査本部は、この事件の前に起きていた2件の類似事件に注目します。2件とも同じように厚生省技官の名刺を渡して薬を飲ませようとした事件でした。1件目の事件で使用された名刺は、実在する厚生省技官の名刺でしたが、2件目の名刺の技官は実在せず偽物であったことが判明。

捜査本部は今回の事件で名刺を受け取った支店長代理の記憶などから、名刺にあった名が類似事件の1件目に使用された技官と同じであったと推測し、捜査が進められました。幸いその厚生省技官は名刺を渡した相手や日付、場所を記録していたため捜査が進みます。そして、1948年8月にテンペラ画家の男を北海道小樽市で逮捕しました。逮捕の決め手は厚生省技官と名刺交換をしていたにもかかわらず名刺を持っていなかったことや、過去に銀行で詐欺事件を起こしていること、さらには、事件直後に被害総額とほぼ同額を預金しており、その出どころがはっきりしなかったことがあげられました。

しかし、警察がこの男を生存者に面通ししたところ、この男だと断定した人は1人もいませんでした。さらに男は逮捕当初、容疑を否認していましたが警察の拷問に近い取り調べの末、逮捕されて1カ月がたったころから自供していたのです。結局男はこの年の10月に帝銀事件と他の2件の類似事件について、強盗殺人事件と強盗殺人未遂事件で起訴されました。男は厳しい取り調べにより逮捕された4日後に自殺を図り、その後も2回自殺を図ったことがわかっています。

裁判とその後

男の裁判は1948年の12月から東京地方裁判所で開かれ、男は自白を翻し無罪を主張します。しかし、1950年7月、東京地方裁判所は男に死刑判決を言い渡し1951年9月に東京高等裁判所でも公訴が棄却され1955年4月、最高裁判所で上告が棄却されて、男の死刑が確定しました。男の支援者は男が自供したのは拷問に近い取り調べなどによるものだとし、信憑性に問題があるとして合計17回の再審請求をおこなうも受け入れてもらえませんでした。

男は獄中でも3度自殺を図りますが未遂に終わり、日本画の大家である横山大観の弟子だったことから死刑確定後も獄中で絵を描き続けたそうです。そして、男は結局最後まで死刑執行はされず、1987年5月に肺炎を患い医療刑務所で病死しました。享年95歳だったそうです。

まとめ

今回紹介した事件は、なぜ拷問に近い取り調べがおこなわれたのか、なぜ判決から30年以上たっても死刑が執行されなかったなど疑問が残る事件でした。しかし、事件の内容的には1人の男に騙されて多くの人が毒殺された事件です。こうした事件に巻き込まれないようにするためには、何より騙されないことが大切です。騙されないための方法はさまざまありますが、知らない人をすぐに信用しないようにすることが重要です。とくに、お子さんや高齢者の方は「騙す」ターゲットにされやすいので、声を掛け合って注意するようにしましょう。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
河合さん写真
河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

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