親権者による性被害を罰する「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」の内容とは?

再婚相手である義父が、結婚相手の娘(当時14歳)と性交をした事件。義父は監護者性交等罪の容疑で、懲役7年の判決を受けました。この事件で注目を浴びたのが、2019年に刑法改正で新しく作られた「監護者性交等罪」と「監護者わいせつ罪」です。

監護者とは?強制交等罪やわいせつ罪とは何が違うのか?今回は「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」について、実際にあった事件と合わせて説明していきます。

刑法の改正で監護者性交等罪、監護者わいせつ罪が新設

「監護者性交等罪」と「監護者わいせつ罪」は、2019年刑法の改正により性犯罪の厳罰化を目的に作られた新しい法律です。強姦罪や強盗強姦罪、強姦罪等の非親告罪化とともに成立しました。

2019年7月13日から施行が始まり、性犯罪の110年ぶりの改正に大きな注目が集まっています。

次の章では、「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」、それぞれの解説をします。

監護者性交等罪とは

「監護者性交等罪」
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交、肛門性交または口腔性交を行った罪。(刑法179条2項)

刑罰は強制性交等罪(刑法177条)と同じように処罰されるので、5年以上20年以下の懲役となります。

監護者わいせつ罪とは

「監護者わいせつ罪」…
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為を行った罪。(刑法179条1項)

刑罰は強制わいせつ罪(刑法176条)と同じように処罰されるので、6ヶ月以上10年以下の懲役となります。

「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」ともに罰金はなく、懲役刑のみが適用。さらに、どちらも非親告罪なので、暴行や脅迫がなかったとしても罪に問われます

監護者性交等罪と監護者わいせつ罪の違い

「監護者性交等罪」と「監護者わいせつ罪」。どちらも似たような感じに見えますが、同じではありません。

この2つでの大きな違いは、「監護者性交等罪」の成立要件として挙げられている、性交、肛門性交または口腔性交を行なったということです。「わいせつ行為」と「性交」では、やはり罪の重さが違います。その結果、「監護者性交等罪」のほうが厳しくなっているのです。

監護者とは

さて、ここまで説明してきましたが、一つ聞き慣れない言葉があったかと思います。皆さん「監護者」とは、誰のことを指しているか分かりますか?

「監護者」…
生活全般を継続的に監護する者を指します。該当するのは同居している親や親戚、そして実の親でなくても両親の再婚相手となる養親、場合によっては養護施設の管理者などもそうです。「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」が成立するためには、加害者が「監護者」になるのかどうかが重要になってきます。

監護者の範囲の狭さ

しかし、監護者の範囲が狭すぎると問題視されています。さきほども説明したように監護者の対象となるのは、共に生活し日常的に生活全般の面倒を見ている

・実の親
・養親
・親戚
・養護施設の管理者

つまり、部活の顧問やスポーツクラブのコーチ、アルバイト先の店長は、親密な関係性があったとしても、生活全般の面倒は見ていないので該当しません

実際、「監護者の範囲」が問題視された判決もあります。
両親の離婚後7年ぶりに会った実父から、当時13歳だった娘が性的被害を受けるという事件。本人が母親に被害を報告し、警察へと相談しました。警察も「強制わいせつ罪」や「監護者わいせつ罪」での立件を視野に入れて親身になって話を聞いてくれましたが、離婚した実父は監護者に当たらないという結果だったのです。

実父に養育費の支払いはなく、娘もずっと会っていませんでした。そのため、実父は監護者ではないと警察に言われてしまいます。最終的に起訴した後、示談をして示談金と「今後一切娘と会わない」と約束する結果になりました。

日本の性交同意年齢の低さ

また、この他にも日本における性犯罪の要件条件に対して、指摘されていることがもう一つあります。それは性交同意年齢の低さです。

性交同意年齢とは…
性行為の同意能力があるとみなされる、年齢の下限のことで、日本は13歳とされています。

海外の性交同意年齢を見てみると、アメリカのカリフォルニアで18歳、イギリスで16歳という結果。日本は海外と比べて、圧倒的に低いことが明らかです。中学生が大人から性行為やわいせつ行為の同意を求められて、本当に判断することができるのでしょうか。今後の法改正で、どのように審議されていくのか注目です。

まとめ

実の子どもへのわいせつ行為や性行為は、親として絶対に超えてはいけない行為です。たとえ子どもに、抵抗するそぶりがなかったとしても。

2019年に刑法が改正され新しくできた「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」は、まさにそんな親たちから被害を受けた子どもを救ってくれる法律です。監護者の範囲など、まだまだ改善の余地はありますが、どうかこの改正をきっかけに少しでも、悲しい事件が減ってくれたらと願います。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

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