【今日の事件簿】有罪判決を受けた男性が自らの手で真犯人を暴く…?清水局事件とは

今から72年前の2月6日、清水局事件が起きました。この事件は1度犯人が検挙され1審と控訴審では有罪になったにもかかわらず、上告審で無罪判決となり冤罪と認められた事件です。今回はこの清水局事件を詳しく紹介していきます。

清水局事件の詳細

1948(昭和23)年2月6日、静岡県清水市にある合板会社から商品を受け取った神奈川県の取引先が、速達の書留郵便で静岡銀行清水支店に代金を送金しました。合計代金は15万8991円で、自由小切手7万9491円と封鎖小切手7万9500円に分けて送ったそうです。ところが小切手が一向に到着しませんでした。合板会社が銀行へ問い合わせると7万9491円の自由小切手は2月10日の時点で、すでに何者かによって換金されていることがわかったのです。

小切手の裏書には架空の名義とともに合板会社の偽造印が押されていたため、警察へ被害届を出します。警察はこれを逓送中の書留が郵便局員によって窃取された事件であるとし、捜査を管轄の名古屋逓信局へ委託。調査によって書留は2月6日に神奈川郵便局から東京発の鉄道郵便で清水郵便局まで発送されていることがわかりました。同じ日に神奈川郵便局から清水郵便局へ発送された書留は5通あり、合板会社の書留を合わせると合計6通。これを神奈川郵便局は3通ずつ2つの郵袋に分けて発送しましたが、清水郵便局へ到着した郵袋は1つだけでした。

さらに未着の郵袋に入っていた書留のうち1通の書留は、後日普通郵便に混じっているところを静岡郵便局で発見され、清水郵便局へ回送されました。このことから未着の郵袋に入っていた3通の書留が普通郵便に紛れ込んだことがわかります。合板会社の書留は普通郵便とともに静岡郵便局または、清水郵便局へ到着するいずれかの段階で、内部の人間によって盗まれたと推測されました。

また、小切手が換金された銀行によると換金に訪れた男は若い男で、2月10日の10時半頃に訪れたそうです。さらに、小切手の裏書に押されていた偽造印が作成された店も判明。印判屋の店主によると印鑑の注文に訪れたのは23歳程度でやせ型、2月8日の10時ごろから3度来店したことがわかりました。その後の調べで、犯人は清水郵便局員ではないかと推測されたのです。

そして、清水郵便局員で2月8日と10日にアリバイがなかった当時22歳の男性が容疑者として浮上し、偽造印を作成した店主と店員に面通しさせた結果2人とも似ていると証言。さらに、小切手の裏書と印判屋の帳簿に書かれた筆跡が男性の筆跡と酷似していたため逓信局は男性の身柄を2月27日に警察署へ引き渡し男性は緊急逮捕されました。

男性は容疑を否認したまま3月に初公判を向かえます。そして、7月の判決公判で懲役1年6カ月の有罪判決を言い渡され男性は即日控訴。控訴審でもアリバイの再検証や筆跡鑑定がおこなわれましたが、結果は懲役1年6カ月の有罪判決は変わりませんでした。

執念の真犯人捜索

控訴審判決が出た日、男性は刑を終えてからでも真犯人を探すと弁護士に語ります。これを聞いた担当弁護士も、男性をこのまま服役させるわけにはいかないと決意。裁判では勝ち目はないことを知りながら、時間稼ぎのために控訴審判決の翌日に上告を申し立てました。男性と弁護士は始め、書留の宛先であった合板会社を疑いますが当てが外れます。2人は次に書留が逓送された鉄道郵便車の乗務員で、事件後に消息を絶っていた当時21歳の男に疑いをかけます。現住所を突き止め、この男は素行が悪かったため何か記録はないかと近くの駐在所を訪問。そこの巡査が男性に同情し協力してくれることを約束してくれます。しかし、疑っていた男には2月8日に東京に居たという完璧なアリバイがありました。そこで男性は犯人が印判屋に行ったとされる2月8日という日付自体に、誤りがなかったのかを疑います。

男性から追及された店主は2月8日であったと強く主張。しかし、店の原簿については1日ごとに記帳するのではなく、記憶を頼りに数日分をまとめ書きすることもあることを認めました。男性はすぐに、男のアリバイに疑いがあることを協力してくれた巡査に報告。すると巡査が駐在所管内で起きた別の窃盗事件についての取り調べも兼ねて、男を駐在所に出頭させます。巡査が3年前の書留窃盗事件についても聞くと、男は「そのことか」と頭を掻きながら自白したのです。男性と弁護士の読み通り、犯人の男が印判屋にいったのは2月9日でした。

最終判決

真犯人として逮捕された男の判決公判が1951年の11月の東京地方裁判所でおこなわれました。そこで男には書留窃盗事件については懲役1年、駐在所管内で起きた窃盗事件については懲役1年6カ月の有罪判決が言い渡されました。そして、男の判決から4カ月が経った1952年の3月、男性の上告審が開始され弁護側に加えて検察側も、男性が犯人ではないことは明らかであるとして無罪を求めます。事件発生から4年余りが経過した1952年4月、全員一致により男性には無罪判決が言い渡されました。

まとめ

今回紹介した事件では、2度も有罪判決を受けた男性が執念で真犯人を探し出し、自ら無罪を勝ち取りました。本来ならば考えられない事件ですが、信じられないことが起きるのが世の常です。犯罪に巻き込まれないようにするには何が起きるかわからないという意識と、できる限りの防犯対策が必要となります。

▶︎【防犯カメラおすすめ20選】これを読めば防犯カメラすべて丸わかり!

Moly.jp編集部

この記事の監修
河合さん写真
河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

関連記事

  1. 自殺勧誘ネットへの書き込みに対する通報が去年の8倍!?相談は専門機関へ

  2. 渋谷ハロウィンのトラック横転犯逮捕!防犯カメラ捜査のプロ「SSBC」とは一体何者??

  3. 東京駅で12月13日、14日に通り魔の犯行予告が!拡散するだけでなく、行かないことが大事!

  4. 11月25日~12月1日は「犯罪被害者週間」覚えておきたい相談窓口

  5. #MeTooが流行っている今だからこそ知っておきたい、男性が直面している冤罪被害

  6. 警視庁も警告!喜びも束の間「オリンピック当選通知メール」に潜む特殊詐欺のワナとは!?

  7. 【犯罪被害者週間】確認しておきたい、被害者支援機関について

  8. 8/16 関西地方は露出狂に要注意!!

  9. 【池上彰vsニッポンの社長100人大集結!SP】のひな壇に登場!?

Moly.jp公式メルマガ

↓ Moly.jp公式メルマガです ↓

【防犯ジャーナリスト河合成樹】が最新の人気記事の独自紹介や裏話、お得な防犯グッズのご紹介や緊急防犯対策などを配信します。ぜひ、読者登録をお願いします

※メルマガにご登録していただいた情報は非公開の上、厳重に管理します。詳細については、プライバシーポリシーをご覧ください。

人気記事

  1. 実は不審者は目立たない? その特徴とは
PAGE TOP