【今日の事件簿】原因は覚せい剤?たった5分の間で起きた男の凶行。「西成区麻薬中毒者殺人事件」とは

今から38年前の2月7日、西成区麻薬中毒者殺人事件が起きました。この事件は覚せい剤中毒の男が妻子を刺し、同じアパートの住民も次々と襲って結果的に4人の命を奪った事件です。今回はこの西成区麻薬中毒者殺人事件について紹介していきます。

西成区麻薬中毒者殺人事件の概要

事件は1982(昭和57)年2月7日、午前9時45分ごろ起きました。大阪市西成区の文化住宅の2階で当時47歳の男が妻(当時34歳)と言い合いになり、カッとなって包丁で刺殺。止めに入った息子(当時11歳)にも刃を向けて重傷を負わせました。さらに男は部屋の外へ飛び出し隣人の夫婦や同じ階の住人、1階の住人を襲って逃走。約5分後、通報を受けて駆け付けた警官に取り押さえられ緊急逮捕されました。

犯人の男と犯行の詳細

逮捕された男は学生時代から暴行や傷害、詐欺などを起こして警察に補導されていました。そして、15歳のときに先輩から覚せい剤をもらって使用し、そこから中毒に。両親に見つかって何度もやめるよう説得を受けますが聞く耳を持たず、18歳で家を飛び出します。その後は繁華街を転々としながら生活し、スリや空き巣を繰り返して計5回逮捕され、そのうち3回刑務所に服役しています。そんな中、当時ホステスをしていた女性と知り合い同棲を始め結婚。妻となった女性は、男の本当の姿を知った頃には息子も生まれて籍も入れており、後戻りできない状態でした。

男は覚せい剤を買う金欲しさに、妻に風俗嬢として働かせることを強要。妻が嫌がると暴力を振るい、子どもにも危害を加えて従わせました。しかし、妻の稼ぎでも足らなくなり自分の両親から金を巻き上げることを思いつきます。実家へ行き覚せい剤をやめると約束し、結婚して子どもができて金がかかることを話すと、両親は信じて納得。預金通帳や家の権利書まで渡してしまうのです。男は通帳の金と実家を勝手に売った金、すべてを覚せい剤につぎ込みました。男の本性を知り財産を失った父親は、心を病み精神病院に入院して、その後病院で死亡。

男は長年の覚せい剤の使用で、幻覚や幻聴に襲われるようになります。そして、それが原因で被害妄想に陥り1975年7月、妻を包丁で切りつけ殺人未遂で逮捕。懲役3年の実刑判決を受けます。出所後も男は妻の収入や生活保護を受けながら覚せい剤を乱用。妻や息子に対して暴力を振るうなどして、何度も警察に通報されていたそうです。そして1982年2月7日、この事件が起こります。事件当日、男が家にいると妻が出かけようとし朝食がないと文句を言いますが、妻は何も言わずに出かけようとします。それが原因で男は逆上し、口論となって台所にあった刃渡り20cmの包丁で妻の胸をいきなり刺しました。

息子が止めに入ると男は何のためらいもなく息子も包丁で刺し、普段から一方的に恨みを持っていた隣人を襲うため、隣の部屋に乗り込み夫婦を刺します。そして、夫婦の悲鳴を聞いた同じ階に住んでいた女性が廊下に飛び出し、状況を把握。驚いて叫びながら自分の部屋にいる夫に119番通報を頼もうとすると、男はそれに気づいて逆上し、この女性を追いかけ乗り込みます。この部屋には、たまたま別の部屋に住んでいた女性が訪問しており、男は自分の一番近くにいたこの女性をメッタ刺しにして殺害。その後、男は逃走しようと1階に降りますが、目の前のドアがいきなり開いて若い女性が出てきます。

出勤するため、たまたま出てきたこの若い女性にも男は間髪入れずに刃を向けました。切りつけられた女性は叫び声をあげ、それを聞いた父親が飛び出してきますが、この父親も胸を刺されてしまいます。男は逃走し、最後に胸を刺された男性が追いかけますが、途中で力尽きて死亡。駆け付けた警官によって男は取り押さえられ逮捕されました。結局この事件で犯人の妻と隣人の妻、通報しようとした住人の部屋を訪問していた女性と、最後に胸を刺された男性、計4人が死亡。犯人の実の息子と隣人の夫、1階に住む若い女性がケガを負いました。

裁判

1984年5月、男の判決公判が大阪地方裁判所でおこなわれました。3人に重軽傷を負わせ、自分の妻を含めた4人を殺害した男には極刑である死刑が言い渡されると、多くの人が思っていました。しかし、死刑から減刑されて無期懲役という判決が下されたのです。理由は覚せい剤により心神耗弱の状態であったと判断されたからだそうです。犯人自らが覚せい剤を使用し続けた結果引き起こした事件に対して、心身耗弱という減刑が妥当であったか、大きく社会的に論議されました。

まとめ

今回紹介した事件は、当時多くの人が覚せい剤の恐ろしさを痛感した事件でした。また、自ら勝手に覚せい剤を使用し続け、家族を含めた多くの人を襲い、4人の尊い命を奪ったにもかかわらずに減刑されたという結果に、多くの人が疑問を感じた事件でもありました。現在も覚せい剤や麻薬に手を染める人が多く頻繁に報道されていますが、麻薬は本当に恐ろしいものです。皆で協力して断じて根絶の努力を続けなければなりません。

▶︎【執行猶予なし懲役刑の可能性も】再犯率の高い覚せい剤。周囲の人間ができるサポートはあるのか?

Moly.jp編集部

この記事の監修
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河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

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