【今日の事件簿】人命救助より高級家具…怠慢な社長による人災?ホテルニュージャパン火災とは

今から38年前の2月8日、ホテルニュージャパン火災が起きました。この火災はホテル側のずさんな管理体制が問題となり、社長兼ホテルのオーナーの男が刑事責任を問われました。今回はこのホテルニュージャパン火災について詳しく紹介していきます。

ホテルニュージャパン火災の詳細

1982(昭和57)年2月8日午前3時24分ごろ、東京都千代田区にあるホテルニュージャパンの9階から火の手が上がり、出火から約9時間に渡って燃え続けました。塔屋を含む7階から10階までの範囲、4186平方メートルを焼損して鎮火。ホテルの宿泊客を中心に死者33名、負傷者34名を出す大惨事となりました。消防に連絡が入ったのが出火から15分後、ホテルの授業員からの通報ではなく付近を通りかかった夜勤中のタクシー運転手からだったそうです。犠牲者のうち多くは廊下での焼死でしたが、有毒ガスを含んだ煙から逃れるために、窓から飛び降りて命を落とした人も13人いました。

生存者の中には9階や10階からシーツをロープ替わりにして、窓から下の階へ避難した人もいたそうです。その後の調べで出火の直接的な原因は9階の938号室に宿泊していたイギリス人男性が、酒に酔ったまま寝タバコをしたことにありました。始めはボヤで一度目覚めて、毛布で覆って完全に消火したつもりが鎮火しておらず、そのまま再び寝入ってしまい燃え広がったとされています。ホテルの従業員からの通報がなかった理由は、ホテルの当直従業員が少なかったことと従業員に対する教育不足による初動対応の遅れにありました。完全出火の7分前、フロント係をしている当直従業員が交代して9階にある当直従業員用の仮眠室に向かったところ、938号室から煙が出ているのを見つけたそうです。

しかし、その従業員は938号室をノックして声がけしたり、大声で緊急事態を知らせたりする行動はしませんでした。部屋のマスターキーを持っていなかったため、1度フロントに戻ります。そして、報告を受けた別の従業員が消火器などは持たずに、マスターキーを持って火元の938号室へ入りました。部屋ではベッド横から寝タバコが燃え移る形で出火しており、従業員が対応に手間取っているうちに燃え広がったそうです。当時現場に勤務していた警備員も内線電話で火災発生の緊急連絡を受けていました。

そして、1度は非常ベルを鳴らしにいったにもかかわらず1人での行動に不安を感じて戻ってきてします。しかも、その間に宿泊客への声がけなども一切しなかったそうです。さらには、そもそも警備員が手動式の非常ベルの鳴らし方を知らず、火災発生の館内緊急放送もしませんでした。そうこうしているうちに出火から20分が経過してしまい、最初の通報が付近を通りかかったタクシー運転手によるものになってしまったのです。

ホテル側のずさんな管理体制

ホテルニュージャパンの火災が大惨事になってしまった理由は、従業員の少なさや初動対応の遅れだけではありませんでした。そもそものホテル側のずさんな管理体制があったのです。当時のホテルニュージャパンは度重なる消防当局の指導があったにもかかわらず経費削減などを理由に、消防設備などの設置を怠っていました。また、専門業者による防火査察や設備の定期点検も怠り、火災報知機や煙感知器も故障したまま修理されずに放置されていたそうです。通常は24時間稼働しているはずの全館加湿設備も電気代節約を理由に、社長兼オーナーの独断によって止められ、暖房のみの稼働状態となっていました。

それにより火災当時のホテル内は湿度が極端に低く静電気が発生するほどの異常な乾燥状態で、火の回りが早くなった原因ともいわれています。当時の社長兼オーナーの男は火災当時、人命救助よりホテル内の高級家具などの運び出しを指示し、度重なる不謹慎な発言もして国民から厳しい批判を浴びました。さらに、現場に突入した消防庁の救助隊長に口止め料として賄賂を図り、隊長に突き返されたことも判明しています。

裁判とその後

火災当時の社長兼オーナーは、ずさんな防火管理のもとに経営をおこない防火及び消火設備の維持と管理、従業員に対する指導を怠ったとして刑事責任を問われます。そして、注意義務に違反して被害を拡大させたとして、1987年に東京地方裁判所から業務上過失致死傷害罪で禁固3年の実刑判決を言い渡されます。1993年には最高裁判所で罪が確定し、その後1997年に刑期を終え、1998年11月に虚血性心疾患で死去しました。東京都や国はこの火災を教訓とし、再三に渡る防火体制不備の改善指導に応じない事業所は実名を公表し刑事告発することにしました。

まとめ

今回紹介したのはホテルの火災は、オーナーの独裁的で傲慢な経営が生んだ人災ともいえるかもしれません。多くの人が組織のリーダーの大切さを実感したのではないでしょうか。こうした被害に遭わないようにするためには、どんなときでも油断することなく、さまざまなことを想定して準備しておくことが大切です。

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Moly.jp編集部

この記事の監修
河合さん写真
河合成樹
防犯ジャーナリスト/防犯設備士

Moly.jpの運営やAIST:産業技術総合研究所(産総研)との犯罪予測の共同研究や防犯対策の講演活動、メディア出演などを通じて防犯の啓蒙、社会実装に取り組んでいる。公益社団法人日本防犯設備協会認定の防犯設備士(第19-29640号)。出演実績:「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」

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