被害者に共通点はある?DVの被害状況と支配されてしまう心理テクニックとは

こんにちは。メンタルケア心理士の桜井涼です。

DVは、暴力行為に注目が集まってしまいがちです。「痛みや恐怖を絶えず与えられているのではないか」と被害の怖い面だけを見てしまうことがあります。

その部分も大切ですが、被害状況や被害者となってしまう人がどのような状況で支配されてしまうのかという部分を理解することも大切です。また、DVには無意識化で行われている隠された心理テクニックがあることにも注目していきたいと思います。

それでは、被害者に視点を向けてみましょう。

DV被害の現状

DV防止法が施行された2001年には、警察への相談件数は3,068件でした。そこから2018年(平成30年)までは、77,482件と桁が異なるほど増えています。それも毎年のように増加しているのです。

この情報を発表している警察庁の見解では、「DV防止法施行後最多である」となっています。

しかし、これはあくまでも相談件数であることを理解してほしいです。数字には上がってきていない、相談することもできず第三者に発見されていない暴力事案が多く隠れているかもしれないということがあるということです。

同じ警察庁の発表では、被害者と加害者の関係において、

・婚姻関係(元含む):76.1%
・内縁関係(元含む):7.6%
・生活の本拠を共にする交際をする関係(元含む):16.3%

となっています。

圧倒的に婚姻関係にある(あった)パートナーからの被害が多いということがわかります。

被害者の性別で見てみますと、

・女性:79.4%
・男性:20.6%

となっていて、女性パートナーを上下関係の弱者として蔑んでいることがお分かりになるかと思います。

出典:警察庁(平成30年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について)より

これらの数字は、相談に行くことができた人たちです。今も相談に行くことすらできない状況に追い込まれている人たちや、DVを受けていることに気がついていない人たちもいることを忘れてはいけません。

「何らかの暴力行為を受けているのに気がつかないのはどういうことなのか?」と不思議に思われるかもしれませんが、前回お話した『逆転意識』が起こっているような場合などは、本人が気づくことすらできないのです。(逆転意識:被害者と加害者の感じ方や立場が逆転して意識してしまっていること)

そんな風になってしまっているDV被害者の特徴はどのような感じなのでしょうか。

DV被害者の特徴

DV被害者には、『自己肯定感が低い』という共通の特徴があるとみていいでしょう。

【性格的特徴】

自己肯定感が低いということは、自分に対しての評価が低いために、「自分は何をやってもダメだ」という気持ちを持ちやすい状態です。このような考え方をしてしまう人は、自分と他人を比較して劣等感を抱きやすいので自分を認める感情がなかなか持つことができないと言えます。

このような性格的特徴がある場合、自分を必要としてくれる配偶者や恋人などに依存しやすくなります。

・「相手の望みを叶えてあげなきゃ」
・「パートナーを失望させたくない」

などのような『相手に尽くす』という考え方を強く感じてしまいます。

【子どもの頃の環境的要因】

自信がないために依存しやすくなってしまうのには、子どもの頃からの環境的要因が関係していることもあります。

・親から虐待を受けていた
・精神的に傷つけられるようなことがあった
・幼少期の愛情不足

などが考えられます。

この辺りは、DV加害者と同じようなところがあります。

【現在の環境状態】

それ以外に、現在の環境状態も大きく関係してきます。

子どもが小さかったり経済的に独立することが難しかったりといったことがありますと、パートナーに依存しやすくなる傾向が見られます。また、近くに頼れる人がいない場合も孤立してしまうために暴力行為をされても我慢してしまうといったことがあります。

さらには、DV被害者を縛ってしまう『DVサイクル』なるものがあるために、離れたくても離れられなくなってしまうことがあるのです。

DVには被害者を縛るサイクルが存在する

アメリカの心理学者レノア・ウォーカーは、DVの研究家として知られています。彼女は、DVが起こる関係において、3つの段階が繰り返されていると説いています。

『暴力のサイクル理論』と呼ばれているもので、下記の3つの段階が繰り返されることが特徴です。

【緊張の蓄積期】

加害者の心の中では、イライラや不安などが起こり、小出しに発散することなく、溜めている状態です。心理的に緊張している状態(ストレスがある状態)が続きます。

【暴力爆発期】

心に溜まった緊張が一気に爆発します。不満や怒りといったネガティブな感情ですから暴力行為が被害者にぶつけられます。

【開放期】

暴力行為をおこなったことを被害者に謝罪や反省した姿を見せ、優しい言葉かけや接し方をします。相手に甘えたようにふるまうため、「ハネムーン期」とも呼ばれています。

上記のように、ずっと暴力行為をしているわけではなく、優しさや気づかいを見せて、謝罪することがあるために、被害者は混乱してしまいます。

人によっては、開放期になると謝罪しながらプレゼントを贈ったり、被害者にしがみついて許しを請うようなことをしたりするそうです。

この暴力爆発期と開放期では、心の状態が違います。マイナスとプラスの矛盾した状況にさらされることで相手は混乱してしまいます。このような状態は、『ダブルバインド』と呼ばれるストレスのかかるコミュニケーションをいいます。

サイクル間に存在するダブルバインド

ダブルバインドとは、二重拘束のことをいいます。2つの矛盾したコミュニケーションを取ることで、相手にストレスを与え、気持ちを縛ることを指します。

DVの場合、暴力爆発期に行われる暴力行為がマイナスの作用をします。その後に、開放期に行われる愛情や優しさといったプラスの作用をされることによって、ストレスを受けているにも関わらず、逃げられなくなってしまうのです。

相手の本当の気持ちがわからなくなってしまうために、相手の言動を過剰に気にするようになります。これが何度も行われると、自分の意思より相手を優先させてしまうようになります。

このダブルバインドによって、暴力を受けているのに

・「この人は自分が支えなくちゃ」
・「本当は優しい人なの、これは今だけ」
・「あの人にもいいところがあるの」
・「あの人には自分がいなきゃだめなの」

というような気持ちになっていくということです。

第三者的な目線で、冷静になって考えてみればわかるものなのですが、DVのような強いダブルバインドを何度も受けてしまうと、無意識のうちに相手のことを優先させるようになるため、逃げられなくなってしまう一因となってしまうのでしょう。

まとめ

被害者となってしまう人は悪くありません。似たような性格的特徴を持っていたとしても環境的要因が似ていたとしてもパートナーから支配される必要はないのです。

パートナーの歪んだ甘えやエゴが暴力行為を引き起こし、心理テクニックを利用して支配されてしまっている状態です。しかも加害者は自分が心理テクニックを使っているなんて思っていません。無意識のうちに使っているのです。無意識に行われているところが怖いところだといえます。

もし、「DVではないか」と思われたら、「暴力行為の後に優しさや謝罪がされていないか」という部分があるなしを判断材料としてみてもいいのではないでしょうか。パートナーに向ける優しさは人を縛るためにあるのではないことを再確認していただければと思います。

▶︎どこからがDV?何がDV?これは愛情なのかどんな感情なのか…

この記事を書いた人
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桜井 涼
メンタルケア心理士/ライター

新潟県出身の元学習塾講師のメンタルケア心理士。「地球が滅亡しても生きていける」と言われていた自衛官の父からサバイバルや防犯に関するトレーニングを受けて育つ。塾講師時代より子どもの心の動きに興味を持ち、メンタルケア心理士の資格を取得。2009年より文筆家として活動。ストーカー被害に遭ったことをきっかけに、心理学を通して女性や子どもの防犯を呼び掛けている。

Moly.jp編集部

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