女性の夜道を楽しくする「しっぽコール」開発者 奥出さんインタビュー

今日から4月が始まりました。
3月4月は歓送迎会のシーズンでもあり、普段よりも帰宅時間が遅くなる人も多くなるのではないでしょうか?また、学生の方々は春休みを満喫するシーズンでもあります。免許合宿や卒業旅行など、さまざまな楽しい行事が待ち構えている人も多いと思います。

そこで、今回のMoly.jpのインタビュー特集ページは、“女性の夜道を楽しくする”をモットーに、「しっぽコール」という防犯IoTバックチャームを開発中の奥出えりかさんにお話を伺いました。

しっぽコールとは

開発中のしっぽコールのプロトタイプ

編集者:まず、しっぽコールとはなんでしょう?

奥出さん:しっぽコールとは、女性が夜道を楽しく歩けるようにするための防犯IoTバックチャームです。IoTと入っているので、詳しい人はスマートフォンなどと連携すると分かってくれるかなと思います。本体を握ると自分のスマートフォンから電話の着信音を鳴らすことができます。事件がおきたときではなく、道が暗いとか、後ろの人がついてきている気がするといった漠然とした不安の時にこの音で警戒をアピールできます。ブザー音ではないので周囲の迷惑を気にせず気軽に使えます。もし危険な目にあった場合は本体を引き抜くとあらかじめ登録された連絡先に位置情報をLINEで送付することができます。位置情報は引き抜かれている間だけ共有されるので、日常のプライバシーは確保されます。

編集者:ターゲットを女性に絞った理由はなんですか?

奥出さん:防犯ブザーは子供向けのものが多いですが、IoT系では見守り機能のある携帯が代表的で、大手携帯キャリア3社とも出していてメジャーな商品となっています。あとは高齢者向けの商品も出ていますね。これらは基本的に保護者と言われる立場の人がいる前提のもので、ユーザーの位置情報を常に確認できるようなものが多いと思います。しかし、大人の女性はプライバシーの観点から常に位置情報を確認されることは求めていないですよね。また、特に一人暮らしの方は自分の身は自分で守ることが必要になります。でも10代後半以降の大人の女性が自分の身を守るために使える商品はほとんどない。実際に女性にインタビューをしてみても、みなさん何かしらの怖い思いをした経験がある一方で、特に対策はしていない。それは現状の防犯商品を欲しくない理由があるということです。そこで、プライバシーへの配慮など、大人の女性のニーズを満たすサービスを提供したいと思いました。特に今の時代だからこそIoTの技術を活用してそれが可能であると考えました。

編集者:たしかに、子供用の商品は非常に多いですよね。地域によっては学校側が配ったりもします。

奥出さん:将来的にはお子さん用への展開も検討しています。防犯ブザーは犯罪抑止効果が本当にあるか疑問視もされていますから、新しいアプローチとなるかもしれません。

編集者:防犯ブザーを引き抜くというのは結構難しかったりしますよね。

奥出さん:心理的ハードルが高いですね。引き抜いたらブザー音が鳴ると思うと、結局周囲への迷惑を考えて日常的には使わなくなってしまいます。そして長い間使わずにカバンにつけている状態が続き、いざという時に電池切れというパターンになってしまうことも多いです。なので、もっと毎日使ってもらえる意味のあるもの、なんとなく不安な時にも使えて、さりげなく警戒をアピールして危険を未然に防げるものを作りたいと思いました。

電話の着信音なら普通の通行者は気に留めない一方、犯罪者は音を嫌いますので、ある程度の抑止効果は期待できます。ユーザー本人が電話の音がなっている状態で周囲を見渡して気にするとさらに抑止効果があると思います。この効果はもちろんお子さんが使ったときも有効だとは思いますが、まずは自分で自分の身を守らなくてはならない大人の女性に届けたいと思っています。

編集者:確かに、被害件数のグラフを確認しても、16〜28歳くらいの女性が被害件数のピークだったりします。

奥出さん:そのくらいの年齢の女性は、夜も一人で歩く機会が多いですからね。ただ、わかりやすく女性としていますが、割合としては少ないですが男性も被害に遭っています。なので、男性のユースケースも考え、ピンクのフワフワなデザインから、シンプルでソリッドな感じのデザインに変更しました。

編集者:確かに、昨日全国の被害を見ていたら、男性が男性に抱きつかれるという事案もありましたし、男の子に女性が抱きついたケースも見受けられました。

奥出さん:男性が被害に遭うわけがないと思われがちですが、しっぽコールの話をすると、「実は昔、被害にあって・・・」と打ち明けてくれた男性がやはり複数人いらっしゃいました。でも、こういう被害は男性自身も「まさか自分が」と思ってしまい、女性以上に周りに打ち明けられず一人で悩んでしまうことも多いようです。

編集者:私の友人の男性も電車で痴漢された経験があると言っていました。男性の中にも悩んでいる方がいらっしゃるということですよね。確かに、以前の紹介動画ではピンクのファーのデザインが紹介されていましたが、現在はシンプルなものになっているんですね。

奥出さん:今は女性も結構シンプルなデザインが好きだったりするので、あまりガーリーな方向にはいかないと思います。デザインはかなり重視していて、欲しい!とたくさんの方に思ってもらえる魅力的なプロダクトを目指していますのでお楽しみに。「ブランドバッグにもつけたくなる防犯バッグチャーム」がゴールです。

編集者:以前、私が防犯ブザーを探している時に、スマホのイヤホンジャックを抜くとブザーが鳴るというものがありました。みんなが使用するものなので、スマホにつけるというのも結構ありなのかなと思います。でも、ほとんどのスマホはストラップホールがないですね。。。

奥出さん:やはり様々な形状のものを出せたら理想的だと思います。このしっぽコールのデザインは、今先っぽについている取り付け金具がバックチャームなだけで、他の装着方法も検討しています。

編集者:以前、海外のジュエリーみたいな形状をした防犯ブザーを記事で紹介したことがあります。

奥出さん:その商品はとても参考にしています。あと指輪型の大音量ブザーもありましたよね。現在はこのように、3Dプリンタで試作を繰り返して形状を検討しています。


現在は3Dプリンタを活用し形状の検討しているそうです

編集者:例えばリュックなら手が届くところにつけられるかなども考えないといけませんよね。

奥出さん:ユーザーの行動とも照らし合わせて、例えば会社から出る時に毎日習慣的に身につけてもらうとか、電車を降りる時にサッと取り出すものにするのかなど、色々なユースケースを考えています。

編集者:先日お会いした際に現状の防犯ブザーを見せていただきましたが、まあダサいものが多いですよね。これを大人の女性が使うのかという話になってしまうと思います。

奥出さん:デザインという面では、先程お話ししたように、もちろん見た目もおしゃれにしたいと思いますが、私はしっぽコールを使う経験そのものもおしゃれにしたいと思っています。今は防犯ブザーという存在を格好悪く意味のないものに感じてしまうから、例えばハイブランドが防犯ブザーを出しても皆さん買わないと思うんです。なので、「しっぽコールを持つ」というライフスタイルが楽しく、おしゃれだよねという世界にしたいと思っています。そのためにも防犯ブザーとは呼ばず、バックチャームと呼んでいます。「今日は一人で花見をして帰ろう」とか、「夕焼けが綺麗だからちょっと遠回りして帰ろう」とか、「時間を気にせずに女子会したい」といった、夜道を安心して歩けたらできるちょっと豊かな生活を「スローナイトライフ」と名付け、提案していきたいと思っています。そのためにアプリのUI、UXもおしゃれで楽しいものにしていきたいですね。

編集者:女性が被害に合うと、「そんな夜遅くに出歩いているからいけないんだ」と言われますよね。

奥出さん:そうなんですよね。男の人は夜中にコンビニにアイスを買いに行ったり、夜遅くまで飲んだりしているのに、女性は諦めがちです。

編集者:そういうレイプ神話(される方が悪い、露出の多い服装をするのが悪い)はまだありますよね。

奥出さん:そういう考えが、被害にあった女性が自分を責めてしまうことにも繋がっているのでしょうね。もっと夜をゆったり自分らしく楽しんでもいいんだよ!と思える社会を目指すためにも、まずは大人の女性をターゲットにしたいですし、それに共感する男性やお子さんにも広めていければいいなと思います。

編集者:このデバイスのコンセプトとしては、「既存の防犯ブザーっぽくないもの」ということですよね。

奥出さん:はい、先程言ったように、既存の防犯ブザーとは全く違う視点でユーザー体験を設計し、夜道を安全に楽しく歩けるようにしたい、というのがゴールです。ちなみになぜ「しっぽ」かというと、しっぽコールがユーザーの相棒のような存在になってほしいなと思っているからです。セーラームーンのルナやポケットモンスターでいうピカチュウのように、アニメや漫画のキャラクターにおける相棒は、小さくてか弱いけど、主人公を支え励まし、的確なアドバイスをくれたりする心強い味方ですよね。しっぽコールが大人の女性にとってそういう存在になれたらいいなと思ってこの名前をつけました。もしかしたら最終的な形はしっぽのようにはならないかもしれませんが(笑)、「しっぽ」というテーマや世界観はこれからも大事にしたいです。

しっぽコールのロゴ。いつもそばで見守ってくれる相棒のような存在をイメージしているそうです

結局防犯は意識の問題なんですよね。全ての犯罪から助けられる方法はないし、最大限自分の身を守りたいと思ったらそれこそボディーガードを雇うしかないんです。私たちはそれをやりたいわけじゃなくて、現状ではほとんど対策方法がない夜道の危険というテーマにおいて、楽しく気軽に始められて、少しの抑止効果があって、それを持っているとユーザー本人の危機管理意識も高まるというようなところを目指しています。

編集者:その考え方は重要だと思います。私の友人も遊んで帰りに別れる際、すぐに携帯に目を向けてイヤホンで音楽を聴き始めます。危ないからやめてくれと思いますね。

奥出さん:結構いますよね。歩きスマホをすると視界も狭くなるので、注意が必要ですよね。やはり隙きがある人が狙われやすいそうですし。

編集者:先ほど、スマホに集中している女性の横を自転車が通り過ぎるのを見たのですが、あの状況ならひったくりも簡単だろうなと思いました。

奥出さん:周辺にいる人の顔を見て確認する習慣が日本人にはなさすぎるとも言われています。漠然とした不安はあるのに、危機意識は低いように思います。

Next:しっぽコールを作ろうとしたきっかけ

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