2006年に公開された「それでもボクはやっていない」。痴漢の容疑で逮捕され、無罪を主張して弁護士と戦う1人の男性と弁護士たちを描いた作品です。「痴漢冤罪」という立証が難しい事件をテーマにしたとして、大きな話題となりました。
今回は性犯罪の中でも、被疑者として無実を証明することが難しい「痴漢冤罪」にフォーカスを当て、痴漢と疑われたときの対処法と防止策をご紹介します。
皆さんの大切な家族やパートナーが、ある日突然疑われて大変な思いをしないように、適切な対処法と防止策を勉強していきましょう!
冤罪とは
無実であるのに犯罪者として扱われることをいいます。
性犯罪・わいせつ事件の捜査では、警察官による犯人の逮捕の際に、被害者や目撃者の証言を重視して捜査されることがほとんどです。なかでも満員電車内で起こる「痴漢」は、周りから見えにくいうえに、警察官が被害者の心情を思う気持ちが影響して、一方的に被疑者が責められてしまいます。
そのため、被害者らが犯人を見間違えたり勘違いしても、犯人だと決めつけて逮捕されてしまうのです。
痴漢で捕まると…
「痴漢された」と言われると次のような手続きが始まります。
①駅員が現れ、駅員室へと誘導される
②警察官が駆けつけ、警察に連行される(逮捕)
③最長3日間、警察で容疑の取り調べをうけ、初動捜査が行われる
④迷惑行為防止条例違反で現行犯逮捕され、検察庁に身柄拘束と書類送検される
⑤検察庁の検察官による取り調べをうける
逮捕されてしまうと、警察署内の留置施設に拘束されて取り調べを受けます。逮捕時から48時間以内に、容疑者の身柄を釈放するか検察庁に送る(送致・送検)かが決まります。
送致・送検された場合、検察庁の検察官は24時間以内に留置の必要性を判断します。
※逮捕直後の72時間は、容疑者にとって調書作成や勾留による身体拘束が継続されるか、釈放されるか決定される重要な期間です。
逮捕された人と面会できるのは、基本的に弁護士のみとなっています。
勾留が決定された場合、容疑者は引き続き10~20日間、留置施設に拘束されます。
この間、会社や学校に行くことはできなくなり、1人で連日の取り調べを耐え続けなければなりません。もちろん、外部との連絡も自由には取れなくなります。
取り調べは密室の中で受けるので、容疑者にとって非常に過酷な期間です。
検察官による取り調べの結果、起訴が決定されると刑事裁判にかけられます。そして、裁判所で公判が開かれて有罪無罪および刑罰が決定されます。
痴漢で捕まると、このような手続きをされて判決を受けます。
痴漢による有罪判決の内容
・迷惑行為防止条例違反
6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
示談の場合は大体10~50万円程度
・強制わいせつ罪
6ヶ月以上10年以下の懲役
示談の場合は、50~100万円程度
その他にも、前科がついたり、仕事によっては資格を失うこともあります。
社会的信頼も失う!
痴漢で逮捕されると、なぜ社会的信頼を失うのでしょうか。その理由は、逮捕された時点で報道機関がその人物が犯罪者確定であるかのように扱うためです。
近年は痴漢が世間で大きな注目を浴びるようになり、その結果まだ確定しているわけではないのにも関わらず「この人物は痴漢だ」と広まってしまうのです。過去には、痴漢の容疑で実名報道されたJR西日本の重役が自殺しています。
このような報道により、容疑者だけでなく、その家族も周囲から噂されます。そして、会社を辞めることになったり、学校でいじめられたりするのです。容疑者のほとんどが家計を支える人物であるため、その家庭の収入が激変することも考えられます。
痴漢だと疑われたら?
では次に、もし痴漢だと疑われたら、どのように対処すればいいのか、説明していきます。この対処法は弁護士によって様々な意見があります。今回はそのなかで意見の多かったものを挙げてみました。
・両手を上げて何も触らない
・周囲の人に目撃者がいないか募る
・自分はやっていないことを冷静に主張する
・駅員室には移動しない、その場から動かない
・警察が来たら、DNA鑑定と繊維鑑定を求める
・弁護士を呼ぶ
・被害者や第三者、警察等の会話を録音する
・まずは被害者に痴漢された状況を話してもらう
最近ニュースでよく報道されている「その場から逃げる」という方法も、弁護士によっては挙げている方もいました。
しかし逃げてしまうと、捕まるまで電車を止めたり、事故に遭う可能性もあり危険です。逃げても捕まってしまえば、その後の証言に不利もなります。あまりこの方法はおすすめしません。
やはり1番効果的なのは、弁護士を呼ぶことです。弁護士を呼ぶメリットとして、法律のプロですから、ひとまずその場での逮捕を回避することができます。そして、実際にその現場で被害者や目撃者などの話や状況を確認できるので、冤罪の証明もしやすくなります。
それでも「弁護士なんて知り合いにいないから呼べない」という方、安心してください。皆さんが利用している、駅の近くにある弁護士事務所でも対応してくれます。それも不安であれば、痴漢冤罪を扱っている弁護士事務所を調べておけばいいのです。
連絡すれば相談に乗ってくれますので、連絡先を登録しておきましょう!
痴漢だと疑われないための防止策5点!
痴漢で起訴されると、99%の確率で有罪判決が出ます。無罪を勝ち取るには、かなりの時間と肉体的にも精神的にも労力が必要で、家族にも負担がかかります。
たとえ無罪判決が確定しても、痴漢という報道から社会的信頼を失い、私生活に影響が出てくるでしょう。
無罪になり損害賠償請求を起こしても勝訴することは難しく、仮に勝訴しても精神的苦痛による慰謝料が少額取れるかどうかぐらいでしょう。
このような苦しみに逢わないためにも、防止策を覚えておく必要があります。
①電車内では、両手でつり革に掴まるようにして手を下げない。手は人の顔よりも高い位置を掴む。
②通勤時間をずらして満員電車を避ける。
③決まった通勤経路を外れない。
④できるだけ女性のそばにいかない。
⑤自転車通勤が可能なら利用して、できるだけ電車を使わない。
痴漢冤罪が増えているという現状から、その手助けをしてくれるアプリも出ています。
冤罪STOP
痴漢冤罪の証明を手助けするアプリ。
スマホのGPSや回転・向きを検知する機能を利用して手と指の位置や動きを詳細に記録して、触っていないことを証明します。情報は0.03秒単位で記録。画面に触れていた手や指の状況、微細な振動の有無が波形でわかるようになっています。
使用方法は、アプリを起動して画面を触ったままスマホを握り、電車に乗ります。もう片方の手は、カバンやつり革を持ちましょう。
痴漢冤罪防止ナビ
痴漢に間違われた際の対応を案内してくれます。弁護士が監修。「人違いであることを主張する」「相手に自分が犯人だと思う理由を尋ねる」「微物検査の希望を申し出る」といった対応方法をナビします。
その他にも、客観的証拠を残すため、相手とのやりとりを動画で撮影も可能です。
アプリ以外にも「痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険」というものもあります。
痴漢の疑いをかけられた場合、携帯から連絡すれば、提携弁護士に一斉にメールが送信されて、そのなかから対応可能な弁護士が相談に乗ってくれるというしくみです。
電車を利用していて不安を感じているのであれば、一度利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
現状、痴漢に対する取り締まりは厳しくなっています。しかしその影響で、なにも身に覚えのない人が捕まっているのも事実です。なかには、痴漢をされていないのに偽装をする「痴漢でっち上げ」という悪質な行為をする人もいるようです。
そのためには、自分自身で痴漢だと疑われないような対策をするしかありません。電車内では必ず手を顔よりも上に上げておきましょう。
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