近年、SNSを使ったストーカー行為の増加により、その使い方を見直す方が増えてきたのではないでしょうか。
今回はSNSでもとくに悪質なLINEを使ったストーカー行為について、掘り下げていきます。
「相手をブロックすれば大丈夫!」は効果ゼロです。正しい対処法を学んで、最悪の事態を防ぎましょう!
ストーカーの現状
こちらは警視庁が発表している平成29年における、ストーカー規制法の検挙数のグラフです。
(警視庁 ストーカー規制法の検挙率より)
平成29年のストーカー規制法による警告は491件で、前年度より36件増加。禁止命令は28件で、前年度より14件増加という結果でした。
今回テーマとなっているLINEを使ったストーカーは、ストーカー規制法の5号違反「無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等」にあたります。
(警視庁 ストーカー事案の行為形態より)
ストーカー行為のなかでは3番目に多い836件でした。
現在はインターネットが発達し、SNSを使って様々な情報を発信する人が増えています。そういった背景が、LINEを使ったストーカーに影響しているのかもしれません。
実際にあったラインを使ったストーカー事件
ここでは実際に起きたラインを使ったストーカー事件を紹介します。
事件は2018年10月15日。
男性はFacebookやLINEの電話番号検索機能を使い、手当たり次第に番号を入力し、そこから表示された女性の写真を確認。好みの女性へ電話をかけていました。
2年間で約30人の女性に何度も電話をかけ続けていて、なかでもとくに好みの女性8人に対し、執拗な電話・卑猥な言葉を発していたそうです。男性は動機について「女性と付き合いたかった」と供述していてました。
電話番号検索機能を悪用した事件として話題になりました。Facebookは2018年4月に電話番号検索機能を廃止しましたが、LINEはいまだに電話番号検索機能が残っています。検索されないようにするためには、プライバシー設定の変更が必要です。
この他にも
・LINE上で着信拒否していた相手が、LINEのゲーム上でゲームのポイントを1ヶ月に25回送りつけてきた
といった事案もあります。実は2013年に改正されたストーカー規制法では、LINEやFacebook、Twitter等のSNSで連続してメッセージを送信することは規制の対象外でした。しかし、2016年に起きた小金井ストーカー殺人未遂事件で、犯人がSNSを通じてストーカー行為をしていたことがわかり、SNSもストーカー行為の対象に入りました。
ストーカーに豹変するLINEの特徴
ストーカー被害に遭わないためには、日頃のやりとりに気をつける必要があります。ストーカーになりやすい人は、知り合い初めのLINEでのやりとりに特徴が出ています。
・「何してるの?」
気になる相手の動向を把握したいという気持ちの表れ。
・「何の友だち?」「どんな友だち?」
自分の知らない世界にいることをヨシとしない。
・「どこにいるの?」
居場所をやたらと知りたがる。
このようにストーカー気質がある人は、気になる相手の動向や居場所、友人関係といったすべてを知りたくて、頻繁に質問を送ってくる特徴があります。少しでもこのような細かい質問を投げかけてくるようであれば、早いうちに対処しましょう。
ストーカーの心理
ストーカーになりやすい人は、「好意を持っている相手のすべてを知りたい」「私にかまってほしい、関心を持ってほしい」と一方的な思いが強い方が多いです。そして、かまってほしいという思いが強くなればなるほど、「自分を愛してくれなくてもいいから、ちゃんと反応はしてほしい」というものに変わっていきます。
初めは愛されたい、仲良くしたいという気持ちだったのが、だんだんとエスカレートしていくうちに、本来の目的からそれてしまい暴走しはじめます。
この暴走が激しくなっているころには「自分のこの苦しみはあいつのせいだ。復讐してやる」という気持ちになっていて、自分の行動を止めることができません。
やってはいけないこと・正しい対処法
暴走して頻繁にLINEを送ってくるようになったストーカーに対し、絶対にやってはいけないことが1つあります。
それは…
相手をブロックすること
相手の連絡を切れるから大丈夫なのでは?と思う方がいらっしゃいますが、これは非常に危険な行動です。
なぜなら、繋がりを切られてしまうからです。
繋がっていたものを切られたことにより、ストーカーは怒りや不満、イライラが募ります。そして、LINEで連絡がとれないなら、直接会いに行ってやるという行動に出てくるのです。
こうなると、もうあなた1人では止めることはできません。たとえ頻繁に連絡がきていても、絶対にブロックだけはしないでください。
小金井ストーカー殺人未遂事件ではきっかけの1つとして、被害者の女性がSNS上で相手をブロックしてしまったことが挙げられています。
では、どう対処すればいいのか。次に正しい対処法を3つ紹介します。
①初期の段階ではっきりと「やめて」と意思表示をする
ストーカーになるかもしれない、狙われていると感じたら、相手に明確な言葉で・1度だけ・感情を込めず・冷静に・「あなたと接触する意思はない」と伝えましょう。
このとき注意するのが、感情的になったり、何度も繰り返し話さないことです。感情的になると、ストーカーは別な方向に受け取る可能性があります。
はっきりと意思表示をすることで、「嫌がっているのにその後もずっとメッセージが送られてくる」と警察に示す証拠にもなります。
②LINEのメッセージはすべて残す
警察に相談する場合、証拠がなければ警察は動いてくれません。履歴を残すのは嫌かもしれませんが、メッセージは残しておきましょう。
③警察に相談する
結局はこれです。対処法②で残した証拠を持って警察に相談しましょう。そして警察に相談し際には、とにかく困っていることを強く訴えるべきです。
もし、ストーカー規制法の適用にならなくても、困っているということが伝われば、警察もストーカーに注意をしてくれます。1人で悩まずに家族や友人、警察に相談しておきましょう。
警察の取り組み
ストーカー事件が増えている状況から、警察では次のような取り組みを行っています。
・相談窓口の増設
ストーカー被害に悩んでいる人が気軽に相談できるように、相談窓口を増やしました。民間機関とも連携して、被害者が必要とするときに必要な機関へ素早く繋がれるような仕組みを確立しています。
・被害者保護の強化
ストーカーで問題として挙げられるのが、個人情報です。個人情報を扱っている関係各所に対し、ストーカーになる可能性のある人物へ、被害者の個人情報が伝わらないような活動を行っています。
・被害者の避難支援
万が一、自宅や勤務先等を知られ、ストーカーに接触される可能性がある場合に、一時避難施設を紹介します。その際の発生する経費の補助も受けています。
また、被害者が弁護士を必要とした際の、弁護士費用の負担が軽減されるようにとりはからってもいます。
・調査、広報啓発活動
ストーカーを減らすためには、現状を知る必要があります。そこで警察では、ストーカー事案の調査をし、そこから得られたものを啓発活動に生かしています。
加害者を出さないための教育活動や、被害者のケアについても調査研究を進めています。
・加害者対策
ストーカー事案は被害者だけに対応するだけでは、解決しません。加害者が再び犯罪を起こさないように、更生させることも重要です。ただし、現状では必ずしも適切な措置というものはまだ確定されていないようです。
まとめ
SNSを悪用したストーカーは増えています。「これ以上メッセージを送ってほしくない」と安易に相手をブロックすると、逆上する恐れがありますので絶対に行なわないでください。
まずは1度「やめてほしい」と意思表示をはっきりしましょう。それでも止まらないのであれば、送られてきたメッセージを証拠に持って警察へ相談してください。
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