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窃盗は病気?あの有名なマラソン選手も発症した「窃盗症」とは…

昨年12月、元日本代表のマラソン選手の原裕美子さんは、万引きの常習犯として有罪判決を受け、謝罪会見を開きました。

原さんはその謝罪会見のなかで、「窃盗症(クレプトマニア)」を発症していると告白し、メディアで大きく取り上げられました。

元日本代表選手を襲った「窃盗症」とはいったい何でしょうか…。今回は窃盗症について説明いたします。

もしかしたら、あなたも知らないうちになってしまうかもしれません。一緒に勉強していきましょう。

 

窃盗症(クレプトマニア)とは?

そもそも窃盗は病気なの?と思う方が多いですよね。実は通常の窃盗と窃盗症は目的が違います。

通常の窃盗は「これが欲しいけど、お金がないから盗んでしまおう」というように、利益が目的になっています。

これに対して窃盗症は、盗るもの自体には執着がなく、盗るという行為に目的を持っています。実際、窃盗症を発症している人は、その商品を買える十分なお金を持っています。

しかし、窃盗前のスリル感や緊張感、窃盗後の達成感や解放感を求めて、窃盗を繰り返しているのです。

こうして盗んだ商品は捨てたり、放置したり、人に与えたり、お店に返したりしています。盗んだ商品の値段は小額で、買える余裕があるのにもかかわらず万引き行為を行なってしまうのが、窃盗症の特徴です。

窃盗症の定義として、世界保健機関WHOは以下のように記載しています。

「この障害は物を盗むという衝動に抵抗するのに何度も失敗することで特徴づけられるが、それらのものは個人的な用途や金儲けのために必要とされない。逆に捨ててしまったり、人に与えたり、秘匿したりすることがある。」

(世界保健機関WHO 「国際疾病分類ICD-10」より)

それでは窃盗症は、どんな基準で決められているのでしょうか。アメリカの精神科学会は窃盗症の診断基準を以下のように発表しています。

 

A:個人的に用いるのでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。

B:窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。

C:窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。

D:盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。

E:盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。

(アメリカの精神科学会の「精神障害の診断と統計マニュアルDSM-5 第5版 窃盗症の診断基準」より)

 

なかなか本人だけでは、判断が難しいように感じますね。実際、周囲もただの窃盗としか認識していなくて、それが精神疾患だとは気づいていません。もちろん、本人もまさか自分が病気だとは思っていないでしょう。

窃盗症は再犯率が高いといわれています。窃盗の再犯率が高い原因の1つとして、社会からの理解が得られにくいことが挙げられています。再犯を止めるには、本人だけでなく周囲の理解と協力が必要になってくるのです。

 

窃盗症の原因

窃盗症の大きな原因は強いストレスです。

現代の人は、会社や学校、家庭といった様々な場面で、ストレスを感じている人がたくさんいますよね。窃盗症を患っている人は、とくに虐待や両親との不仲といった問題のある家庭育った人が多くいました。

原さんは代表時代の厳しい体重管理で、大好きな食事を制限された結果、摂食障害を患いました。そしてある日、彼女は摂食障害による症状で、正常な判断ができなくなり、万引きをしてしまいます。

摂食障害と窃盗症は密接な関係で、原さんと同じように窃盗症を患っている人は、摂食障害を合併している人が多くいます。

この他にも、アルコール依存症や、自傷行為といった症状から窃盗行為をするもいるようです。男女別にみると、女性が圧倒的に多く発症しています。

 

なぜやめられないのか

では、窃盗症はなぜ、やめられないのでしょうか。

それは、アルコール依存症やギャンブル依存症のように、窃盗症も依存症だからです。盗むという行為に快感を覚えているため、なかなか自分の力だけではやめることができません。

一時的に落ち着いたと思っても、ストレスを感じたり、当時の快感を思い出して再発してしまうのです。

完治するには何度も失敗を繰り返して、根気強く治療していくしかありません。

 

治療法

日本では窃盗症に対しての認知が低く、窃盗症を専門に扱っている病院は少ないです。今回は、原さんが受けた治療法と、窃盗症を支援している自助グループの活動をご紹介していきます。

条件反射制御法

万引きの快感は、動物的本能では狩猟の成功にあたります。つまり、窃盗症の人にとって「盗む」という行為は、生きるために必要な行動なのです。

人の行動は動物的な本能を持つ脳と、倫理観を持つ脳の2つから成り立っています。人が犯罪を起こさないのは、倫理観を持つ脳が止めているからです。

しかし、強いストレスを受けた人は、動物本能を持つ脳が過剰に働き、万引き行為を行ってしまいます。

そこで、行なう治療が「条件反射制御法」です。この治療では、動物本能の働きを抑える効果が期待できます。

①「私は万引きをやらない」と、1日に何度も言葉と動作を繰り返します。

②病院内で疑似店舗を作り、そのなかで万引きをさせます。店舗から出てきたところで、病院スタッフが万引きした商品を回収。これで万引きの失敗を体験させるのです。この行為を少なくとも200回は繰り返していきます。

③行動を繰り返したら、次は想像で整理します。この想像という行為は、今まで行なってきた万引きの状況を詳しく思い出して、作文にして自分で読み上げる治療法です。

④最後はこれまで行なってきた行為を、病院から自宅などで繰り返します。

以上のことを繰り返し行なっていくと、だんだんと盗みたい気持ちが無くなっていきます。

もちろん、失敗することもあるでしょう。でも失敗は間違いではありません。改善して再び治療を続けていくことが大事なのです。刑罰では病気を治すことはできません。

 

クレプトマニア・アノニマス

窃盗症の患者を支援する、自助グループの集まりのことをいいます。

このグループにはすでに5~10年の間、問題行動が止まっている人、「成功のモデル」がたくさんいます。そういった方と直接接することで、モチベーションも上がっていくのです。

また、同じ症状で悩んでいる人たちと、悩みを共有することで病気と向き合うようになり、病気の克服に繋がっていきます。この集まりは、定期的に行われているので、気持ちを持続できるという点も利点です。

最近は、全国へと活動が広がり、原さんも現在、自助グループで生活しています。

同じ悩みを抱えている同士だからこそ、素直に心のうちを明かすことができるのでしょう。

 

まとめ

「窃盗症(クレプトマニア)」はご理解いただけましたか?

今まで万引き行為をしていた人は、心が弱い人が悪いと思われていました。

しかし、それは間違いで病気だったのです。頭では悪いとわかっているのに、気がつくと盗んでいて、自分ではなかなか止められません。

好きで万引きをしているわけではないのです。強いストレスを解消するために、万引きを行なってしまいます。

彼女たち救うためには、周りの人たちの病気に対する理解と、協力が必要になってきます。もし、あなたの周りに万引きで悩んでいる人がいたら、まずは話を聞いてあげましょう。

 

Moly編集部

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